「小1の壁」。 世間では学童保育の預かり時間の問題などが取り沙汰されますが、我が家における「壁」は、そこにありません。本当の戦いは、家に帰ってから始まるのです。
保育園時代とは違い、翌日の授業に備えて「早寝早起き」のリズムを整えることは、学校生活をスムーズに送るための生命線です。睡眠不足は集中力の低下や不機嫌に直結しますから、パパとしての責任は重大。
しかし、この「寝かせる」というミッションが、これほどまでにハードルの高い障害物競走だとは、誰が想像したでしょうか。 これは、愛する娘を夢の世界へ送り届けるために奮闘する、ある父親の記録です。
第1関門:脱衣所の逃走劇「裸のランナー」
「さあ、お風呂入った!キレイさっぱり!」
温かい湯船で一日の疲れを癒やし、ホカホカの状態で脱衣所へ。ここまでは完璧です。しかし、バスタオルで体を拭いた瞬間、娘のスイッチが入ります。
「キャハハハ!パパ、あっち向いてて!」
そう言ったかと思うと、彼女は一糸まとわぬ姿でリビングへと脱兎のごとく駆け出していくのです。 「ちょっと待て!風邪ひくぞ!戻ってきなさーい!!」
私の怒号も虚しく、彼女は裸のままソファへダイブし、クッションを盾に立てこもります。なぜ子供は風呂上がりに裸で走り回りたがるのか。これは人類の未解決ミッションの一つに違いありません。 ここで「早く着なさい!」と正論で怒鳴っても、彼女の心のシャッターが閉じるだけ。私は深呼吸をし、策士へと変貌します。
「ようし……それなら勝負だ!」
私は自分のパジャマを手に取り、実況中継風に声を張り上げます。 「おっと、パパ選手、ものすごいスピードでパンツを履こうとしている!これは世界新記録が出るか!?娘選手はどうだ!?まだ裸だー!!」
この一言が効果てきめん。「競争」という言葉に弱い一年生。 「あー!パパずるい!私が先!!」
彼女は慌ててパジャマをひっつかみ、猛烈な勢いで着替え始めます。ボタンを掛け違えそうになりながらも、必死な形相で着替える娘。 「やったー!私の一着!」 「くっそー、負けたか……」 悔しがる演技をする私を見て、彼女は満足げにドヤ顔。これで第1関門突破です。
第2関門:カリスマ美容師の登場
次は髪の毛です。濡れたまま放置すれば風邪のもと。しかし、ドライヤーの音や熱さを嫌がり、逃げ回るのが常でした。 そこで編み出したのが、「美容室ごっこ」作戦です。
私は少し気取った手つきでクシを持ち、裏声を使って話しかけます。 「いらっしゃいませ~、お客様。本日はどのようなスタイルになさいますか?」
娘はすっかり客気取りで、鏡の前におとなしく座ります。 「うーん、プリンセスみたいにサラサラにして」 「かしこまりました。では、魔法の風を当てていきますね~」
私が美容師になりきって丁寧に乾かし始めると、彼女はうっとり。8割ほど乾いたところで、今度は技術指導の時間です。 「さて、特別にカリスマ美容師のテクニックを伝授しましょう」 「えっ、私もやっていいの?」 「もちろんです。こうやって、手首を返して……そう!上手ですね!才能ありますよ!」
褒め殺し作戦により、彼女は自分でドライヤーを持って仕上げを行います。 「見てパパ、サラサラ?」 「完璧だ。クラスで一番のサラサラヘアだよ」 自己肯定感を高めつつ、髪もしっかり乾く。一石二鳥の成功です。
第3関門:鏡の中のコピーキャット
続いては歯磨き。 「虫歯菌はね、寝ている間に工事をして、歯に穴を開けるんだよ……ドリルでガリガリって……」 と、少し脅し文句を入れつつ洗面所へ誘導しますが、ただ「磨きなさい」では適当に終わらせてしまいます。
ここで発動するのは「パパの真似っこゲーム」。 「パパと同じ動きをしてね。右、左、イーの口!」 鏡の前に並んで立ち、私が大げさに歯ブラシを動かすと、娘も必死に真似をしてきます。 「次は奥歯の洞窟を探検だ!」 シンクロナイズド・スイミングならぬ、シンクロナイズド・歯磨き。
最後は私の膝の上にゴロンとさせて、「仕上げ磨き兼パパチェック」のお時間です。 「あ、ここに虫歯予備軍が隠れてたぞ!逮捕!」 「きゃー、やっつけて!」 親子のスキンシップを兼ねたこの時間は、意外と私にとっても癒やしのひとときだったりします。
第4関門:魅惑の布団までの道のり
全ての準備が整いました。あとは布団に入るだけ。しかし、ここが最大の難所です。 リビングには、読みかけの絵本、描きかけのお絵かき帳、そして人形たちが、「まだ遊ぼうよ」と娘を誘惑してくるのです。
「まだ寝ない!お人形の学校ごっこするの!」 始まった……。ここで強制終了させると、ギャン泣きして覚醒してしまうリスクがあります。 私はすかさず、四つん這いになり、背中を差し出します。
「お待たせいたしました!寝室行き、パパ新幹線の最終列車が発車いたします!お乗り遅れのないようご注意ください!」 あるいは日によって、それはパパ・ロケットであったり、パパ・ホース(馬)であったりします。
「乗るー!!」 娘は嬉々として私の背中に飛び乗ります。 「ビューン!ガタンゴトン!次は~お布団駅~、お布団駅です」 娘の重みが腰に響きますが、これもトレーニングだと言い聞かせ、寝室まで輸送します。
もし乗り物気分じゃない時は、「子守唄の生ライブ」や「しりとり大会」を餌に誘い出します。 「布団の中で内緒話をしよう」というのも効果的です。秘密基地に潜り込むようなワクワク感を演出して、なんとか布団の中へと誘導するのです。
第5関門:それでも寝ない夜には
布団に入り、電気を消しても、娘の目がランランとしていることがあります。 「ねえパパ、今日学校でね……」 今日あった出来事の話が止まりません。
「うんうん、そうか。楽しかったんだね」 話を聞きつつ、背中をトントン。 ここで私がよくやるのは、小さな声での「しりとり」です。単調なリズムと言葉の羅列は、意外と眠気を誘うもの。 「りんご……ゴリラ……ラッパ……」 次第に娘の返答が遅くなり、「パ……パ……ぱ……ん……つ……」と寝言に変わっていく瞬間。これが私の勝利の瞬間です。
しかし、どうやっても寝ない日もあります。そんな日は、たいてい昼間の活動量が足りていない時です。 なので、休日や仕事が早く終わった日は、夕食前に「体力消費作戦」を決行します。
近所の公園へ行き、ボール投げ、全力で鬼ごっこ。鉄棒の練習。縄跳び対決。 「パパ待ってー!」と走らせ、遊び倒します。 体をしっかり動かした日の夜は、本当にスムーズ。布団に入って3分で「スースー」という寝息が聞こえてきます。やはり、子供にとって最高の睡眠導入剤は「疲れ」なんですね。
最後に:皆様の知恵を貸してください
こうして毎晩、試行錯誤と工夫(と小芝居)を重ねて、なんとか娘の睡眠時間を確保しています。 正直、仕事から帰ってきてからのこの「寝かしつけ戦争」は、体力的にも精神的にもヘトヘトになります。でも、寝顔を見ると「まあ、今日も頑張ったな」と思えるから不思議です。
ただ、私のネタ(乗り物の種類や美容師のバリエーション)もそろそろ尽きてきそうです。 「小1の壁」と戦う同志のパパさん、ママさん。 もし、「うちはこんな方法で寝室へ誘導しています!」「こんな寝かしつけグッズが神でした!」という良い方法があれば、ぜひ教えていただけないでしょうか?
コメント欄で、皆様の「我が家の寝かしつけ必勝法」をお待ちしております。 明日もまた、スムーズな朝を迎えるために。


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