休日の朝。目覚まし時計をかけずにゆっくりと起きられる、パパにとっても至福の時間です。リビングに行くと、もうすっかり着替えた小学1年生の娘が、お気に入りのおもちゃ箱をひっくり返して何やらゴソゴソと準備をしていました。
最近、小学生になって少しお姉さんになったからか、遊びのバリエーションもぐっと増えてきました。平日は学校に宿題にと頑張っている分、週末は思いっきり娘のペースに付き合ってあげたいなと思っています。
「パパ、おはよう! あっちのソファーに座ってて!」
どうやら今日は、朝から何やらイベントが開催されるようです。指示された通りにソファーに腰掛けると、娘は自分の背丈には少し大きな、ママのピンク色のエプロンを引っ張り出してきて、首から下げました。
「いらっしゃいませ! 今日は『レストラン・リボン』へようこそ!」
なるほど、今日は「お店屋さんごっこ」のようです。
「いらっしゃいませ。お客様、ご注文はお決まりですか?」
手にはいっちょ前に、小さなメモ帳とえんぴつを持っています。レストランの店員さんになりきっているその真剣な表情が可愛くて、パパは思わず頬が緩んでしまいます。
「うーん、メニューはあるのかな?」と意地悪く聞いてみると、「メニューは今、シェフの頭の中にあります!」と堂々としたお返事。どうやら日替わり、いや、秒替わりの気まぐれレストランのようです。
「それじゃあ……パパはハンバーグが食べたいな。ハンバーグセットをお願いします。あ、でもハンバーグ以外のメニューは、シェフの『お任せ』でお願いできるかな?」
「お任せですね! かしこまりました! 少々お待ちください!」
娘は目をキラキラさせて、厨房(という名のおもちゃ箱が散乱したラグマットの上)へと走っていきました。ガチャガチャ、カチャカチャと、おもちゃの食器や食材を選ぶ音が響きます。「うーん、これと、あれと……パパ、いっぱい食べるからな〜」という独り言も聞こえてきて、何が出てくるのか、パパもワクワクしながら待つことにしました。
「お待たせいたしました! ハンバーグセットのお任せコースです!」
数分後、満面の笑みでお盆(という名のプラスチックのフタ)を運んできた娘。そこに並べられていたのは、パパの想像を遥かに超える、とんでもなく斬新で豪華なラインナップでした。
メインの大きなおもちゃのハンバーグ。そこまでは良いのです。しかし、その脇を固めるのは、卵ときゅうりの巻き寿司、そしてなぜかアンパンマンのふりかけがかかっている設定の三角おにぎり。さらに、飲み物はプラスチックのコップに入った(という設定の)リンゴジュース。
それだけではありません。別のお皿には、こんがり揚がったカレーパン、そしてお鍋にはおでん(具は卵と豆腐のみという渋いチョイス)。さらにさらに、「食後のデザートも一緒にお持ちしました!」と、ストロベリーアイスクリームと苺のショートケーキまでドドンと置かれました。
和・洋・中、そして季節感すらも完全に無視した、炭水化物と糖質のオンパレード! 「ハンバーグ以外はお任せ」というオーダーに対して、娘が持てる全おもちゃ食材を駆使してくれた、まさに「愛情たっぷりフルコース」です。
「わあ、すごいボリュームだね! 巻き寿司とカレーパンとおでんが一緒に食べられるなんて、最高のレストランだなあ」
パパがそう言うと、娘は得意げに胸を張りました。
「パパ、お仕事で疲れてるから、いーっぱい食べて元気になってね!」
その優しい言葉に、パパは感動してしまいました。こんな斬新なメニューも、パパへの愛情の裏返しだったのですね。
「でも、パパ一人じゃこんなに食べきれないから、シェフも一緒に食べようよ」と提案すると、「えー、しょうがないなあ」と言いながらも嬉しそうに隣に座りました。二人で「あむあむ」「もぐもぐ」「あ、このおでん熱いよ!」と、見えない料理を頬張る時間は、どんな高級レストランで食事をするよりも美味しくて、楽しいひとときでした。
すっかりお腹がいっぱい(になったふり)になったところで、お会計の時間です。
「店員さん、お会計をお願いします」
「はーい!」
娘は今度はレジ係に変身です。ピンク色の電池式おもちゃレジスターの前に立ち、ピッとボタンを押します。
「お客様、お会計は……『スマイル15』になります!」
スマイル15! なんて素敵な独自通貨でしょうか。円でもドルでもなく、笑顔が通貨のレストラン。
「スマイル15ですね。じゃあ……はい、これでお願いします」
パパは、おもちゃのお札の中から「10」と書かれたお札と、「5」と書かれたコインを選んで渡しました。ただのおままごとですが、ここは小学1年生になった娘のちょっとした算数のお勉強タイムでもあります。
「10スマイルと、5スマイルですね。あわせて……えーっと……」
娘は指を使いながら、少し考え込んでいます。小学校で足し算を習い始めたばかり。10以上の計算は、まだ少し頭を使うようです。
「10の次に、5を足すんだよ。11、12……」とパパが小さくヒントを出すと、「11、12、13、14、15! あ! 15スマイル! ちょうどいただきました!」と、パッと明るい顔になりました。
「ありがとうございました! またお越しくださいませ!」
元気な声で見送られ、今日の「レストラン・リボン」は大盛況のうちに幕を閉じました。
いかがでしたでしょうか。週末、どこか遠くへお出かけするのも楽しいですが、お家の中でゆっくりと子どもの想像力に付き合ってみるのも、素晴らしい時間の過ごし方です。
大人の常識では考えられないような「斬新なメニュー」が出てきたり、独自通貨でお会計をしたり。そこには、子どもならではの自由な発想と、ちょっとした成長(今回は10以上の足し算!)を発見できる喜びがあります。
「お任せで」とお願いするだけで、子どもは「パパは何が好きかな」「喜んでくれるかな」と一生懸命考えてくれます。次のお休みの日、もしお子さんが「お店屋さんごっこ」を始めたら、ぜひ皆さんも「全部お任せで!」と注文してみてください。きっと、想像以上の笑顔(スマイル)と、愛情たっぷりの面白メニューが運ばれてくるはずですよ。週末の親子の遊びのヒントになれば嬉しいです。


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