「パパ……これ、どうやって座るの?」
小学校入学を控えたある日、娘が初めて和式トイレを見たときの言葉です。
わが家のトイレは洋式。娘はそれまで和式トイレを使った経験がありませんでした。
小学校に入ると、授業や休み時間など、保育園・幼稚園とは生活の流れが変わります。
なかでも私が気になったのが、学校のトイレです。
「授業中にトイレに行きたくなったらどうする?」
「洋式トイレが空いていなかったら?」
大人には小さな問題でも、初めて小学校に通う子どもには大きな不安になるかもしれません。
そこで今回は、入学前に娘と和式トイレの練習をした話を紹介します。
最初は「後ろに倒れそう」と戸惑っていた娘が、何度か練習した後には「次は一人で出来そうー」と話してくれました。
父親としての失敗や、理学療法士として気づいたことも振り返ってみます。
小学校入学前に気になった2つのトイレ問題
小学校への入学準備というと、ランドセルや学用品、ひらがなの練習などを思い浮かべるかもしれません。
でも、私が気になったのは毎日の生活に関わることでした。
① 授業中にトイレに行きたくなったら?
保育園や幼稚園では、先生がトイレに行くタイミングを声かけしてくれることもあります。
一方、小学校では授業中に席に座って過ごす時間が増えます。
娘も授業中にトイレへ行きたくなったらどうしよう、と少し不安そうでした。
そこで、親子で作戦会議。
私は娘に、休み時間や昼休みにトイレへ行くことを思い出してみようと伝えました。
特に給食の後は、遊び始める前にトイレを済ませておけると安心です。
そして、もう一つ大切なこと。
「授業中でも、我慢できないときは先生に伝えていいんだよ」
そう話して、家で練習しました。
私が先生役になり、娘が手を挙げます。
「先生、トイレ!」
元気よく伝える娘。
思わず笑ってしまいました。
実際の学校でどのように申し出るかは学校ごとに確認が必要ですが、困ったときに助けを求める練習にはなったと思います。
② 和式トイレしか空いていなかったら?
もう一つの心配は、和式トイレです。
最近は学校でも洋式トイレへの改修が進んでいますが、和式トイレが残っている学校もあります。
わが家では洋式しか使ったことがなかったため、娘にとって和式トイレは未知の存在でした。
もし学校で初めて和式トイレを見たら、どうすればよいか分からず困ってしまうかもしれません。
「それなら、入学前に一度経験しておこう」
そう考えた私は、娘と和式トイレの練習をすることにしました。
初めての和式トイレ!ひいおじいちゃんの家で練習
和式トイレを体験するために向かったのは、娘のひいおじいちゃんの家です。
実は、ひいおじいちゃんの家には昔ながらの和式トイレがあります。
しかも、汲み取り式のトイレです。
娘にとっては初めて見る形。
トイレの扉を開けると、娘の動きが止まりました。
「パパ……これ、どうやって座るの?」
そうだよなあ。
家では便座に座るだけですから、突然しゃがんで使うトイレを見ても分からないのは当然です。
私は、和式トイレの丸く盛り上がった部分を前にして、便器の左右に足を置くことを説明しました。
そして、しゃがむ姿勢を見せながら、
「カエルさんみたいにしゃがむんだよ〜。ケロケロ」
と声をかけました。
少し冗談を交えながらの練習開始です。
しかし、実際に娘がしゃがんでみると、思っていた以上に難しかったようです。
「後ろに倒れそう」和式トイレで気づいた身体の使い方
和式トイレにしゃがもうとしたとき、娘が言いました。
「後ろに倒れそう」
確かに、身体が少し不安定に見えます。
洋式トイレなら、便座が身体を支えてくれます。
でも、和式トイレでは自分の足で身体を支えながら、しゃがんだ姿勢を保つ必要があります。
普段、娘が床にしゃがむことはあります。
それでも、便器をまたぎ、決められた場所に足を置いて姿勢を保つのは、また別の難しさがあるのかもしれません。

理学療法士パパとして観察したこと
ここで、少しだけ理学療法士として考えてみました。
和式トイレを使うときには、いくつかの動きが組み合わさります。
- 股関節・膝・足首を曲げてしゃがむ
- 両足で身体を支える
- しゃがんだ姿勢でバランスを保つ
- 衣服を汚さないように扱う
- 用を済ませた後に立ち上がる
単に「しゃがめるかどうか」だけではありません。
慣れない場所で足の位置を決め、姿勢を保ちながら別の動作をすることも必要になります。
娘の場合、しゃがむこと自体がまったくできないわけではありませんでした。
ただ、和式トイレという慣れない環境では、身体の支え方が難しかった可能性があります。
だからといって、筋力不足や発達の問題があったと判断できるわけではありません。
私は、まず動作に慣れることが大切なのではないかと考えました。
カエルさんの姿勢を繰り返してみた
そこで取り入れたのが、カエルさんのようにしゃがむ練習です。
大切にしたのは、難しい説明をすることより、実際に姿勢を経験してみること。
最初から上手にできなくても構いません。
何度か繰り返すうちに、私には娘のしゃがみ込み姿勢が少しずつ安定してきたように感じられました。
和式トイレ特有の足の置き方に慣れてきたことも関係しているのかもしれません。
ただし、数回の練習で筋力やバランス能力そのものが向上したとまでは言えません。
今回感じた変化は、慣れない動作への戸惑いが減り、姿勢を保ちやすくなってきたことでした。
怖がるかと思ったら…娘はトイレの構造に興味津々!
練習中、もう一つ予想外のことがありました。
汲み取り式トイレの奥を見た娘が、
「パパ……この下、どうなってるの? どんぐり落としたら音が鳴るかな?」
と興味を示したのです。
私は、てっきり暗いトイレを怖がるかもしれないと思っていました。
ところが娘は、トイレの構造の方が気になる様子。
しかも、身を乗り出して中を見ようとします。
「わわわ! ストップ!」
思わず娘を止めました。
さすがに、そこは危ない。
昔ながらの汲み取り式トイレは、開口部の近くに身を乗り出したり、物を落としたりしないよう注意が必要です。
娘の好奇心には驚かされましたが、安全を確認することの大切さも感じた出来事でした。
父親としては、和式トイレの使い方を教えるつもりだったのに、思いがけないところで慌てることになりました。
「おうちにある方のトイレが使いやすいね」娘の正直な感想
実際に和式トイレを経験した後、娘が言いました。
「おうちにある方のトイレが使いやすいね」
思わず納得しました。
普段使い慣れている洋式トイレの方が、娘にとっては安心して使えるのでしょう。
実際、和式トイレではしゃがむ姿勢を保つ必要がありますが、洋式トイレなら便座に座ることができます。
和式トイレを使えるようになることも大切ですが、無理に和式を選ぶ必要はありません。
娘にとって使いやすい方法があるなら、それを選べばよいと思います。
今回の目的も、和式トイレを好きになってもらうことではありません。
必要になったときに、どう使えばよいかを知っておくこと。
その経験ができれば十分でした。
何回か練習した後に聞けた「次は一人で出来そうー」
和式トイレの使い方を知り、しゃがむ姿勢を何度か練習した娘。
その後、こんな言葉が聞けました。
「次は一人で出来そうー」
最初は「どうやって座るの?」と戸惑い、「後ろに倒れそう」と話していた娘です。
それが、次は一人でできそうだと思えるようになった。
この変化が、父親として一番うれしかったことです。
もちろん、この一言だけで学校でも問題なく使えるとは限りません。
実際の学校では、トイレの形や広さ、周りの音、時間なども違います。
それでも、まったく知らなかったものが、一度経験したことのあるものに変わったのは大きいと感じました。
理学療法士としても、子どもが新しい動作を覚えるときには、実際に試し、自分なりに感覚をつかむ経験が大切だと考えています。
今回も、細かく説明するだけでなく、娘自身が身体を動かして確かめる時間を作れたことがよかったのかもしれません。
小学校入学前に家庭で試すなら?和式トイレ練習のポイント
今回の経験を振り返ると、和式トイレの練習にはいくつかのポイントがあると感じました。
まずは服を着たまま安全な場所でしゃがむ
いきなり本物の和式トイレで練習する必要はありません。
最初はリビングなど、平らで滑りにくい場所でしゃがむ姿勢を試してみてもよいと思います。
「カエルさんみたいにしゃがんでみよう」
という声かけなら、遊びの延長として取り組みやすいかもしれません。
ただし、深くしゃがむのが難しい子に無理をさせる必要はありません。転倒しないよう、そばで見守りましょう。
足の置き方と衣服の扱いを確認する
本物の和式トイレを使用するときには、保護者が衛生面と安全面を確認します。
金隠しと呼ばれる盛り上がった部分がある方を前にして、便器の左右に足を置きます。
また、ズボンやスカート、下着を汚さないように扱うことも必要です。
ただし、衣服の扱いは本人の服装によって異なります。
安全で清潔な場所で、子どもと一緒に確認するとよいでしょう。
「できた!」より「困ったらどうする?」も大切
学校で洋式トイレが空いていなかったら、どうするのか。
和式トイレが使いにくかったら、どうするのか。
こうしたことも、入学前に話しておけると安心です。
トイレの練習だけでなく、先生に困ったことを伝える練習も役立つかもしれません。
無理に和式トイレを使えるようにしなくてもいい
学校に洋式トイレがあるなら、普段はそちらを使う方法もあります。
しゃがむ姿勢が難しい、身体に痛みがある、強い不安を感じる場合には無理をせず、学校に相談してください。
また、トイレを我慢しすぎたり、水分を控えたりすることは避けたいところです。
まとめ|初めての経験が「次はできそう」につながった
小学校入学前に娘と取り組んだ、初めての和式トイレ練習。
最初は、
「パパ……これ、どうやって座るの?」
「後ろに倒れそう」
と戸惑っていました。
でも、実際に姿勢を試し、何度か経験した後には、
「次は一人で出来そうー」
という言葉が聞けました。
今回、私が感じたのは、子どもにとっての「できない」は、必ずしも能力が足りないからではないということです。
初めてで方法が分からない。
慣れない姿勢で身体の使い方が分からない。
そんな場合もあるのかもしれません。
「分からない」から「やってみた」、そして「次はできそう」へ。
これからも私は、そんな娘の小さな変化を大切にしていきたいと思います。


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