「自転車に乗れるようになりたい」
そう言っていたはずなのに、いざ自転車を目の前にすると、
「やっぱり転ぶのが怖いからいい!」
小学2年生の娘から返ってきたのは、まさかの練習拒否でした。
こんにちは。理学療法士として働きながら、娘たちと一緒に運動や遊びを楽しんでいるネドです。
普段の仕事では人の動きを観察していますが、子育てとなると専門職だから何でも分かるわけではありません。
むしろ、
「よし、この方法ならいける!」
と思ったら全然うまくいかなかったり、
「そこが怖かったの?」
と娘の反応から気づかされたり。
今回の自転車練習も、そんな試行錯誤から始まりました。
最初にお伝えすると、我が家でいきなりペダルをこぐ練習はしませんでした。
まず試したのは、
- 実際に自転車に乗る姿を見る
- 安心して自転車にまたがれる状態をつくる
この2つです。
「早く乗れるようにする方法」というより、「怖い状態から練習を始められる状態へどうつなげたか」。
我が家の実体験として紹介します。

「乗りたい。でも転ぶのは怖い」小2娘の自転車練習がスタート
小学2年生になり、周りのお友達にも自転車に乗れる子が増えてきました。
娘もある日、
「私も自転車でお出かけしたいな」
とポツリ。
行きたい気持ちはあるようです。
ところが実際に自転車を出してくると、
「転んだら痛いよね?」
「やっぱり今日はいい」
と急に慎重モードになりました。
親としては、
「大丈夫、大丈夫!」
「とりあえず乗ってみよう!」
と言いたくなります。
私も最初は、「乗ってみた方が早いのでは?」と思いました。
でも娘を見ていると、まだペダルのこぎ方以前の問題でした。
自転車に乗ることそのものが怖い。
それなら、まず「こぐ練習」ではなく「怖さを少し小さくするところ」から始めてみよう。
そう考えました。
ステップ1|まずは「乗っている姿を見る」ところから始めた
最初にしたのは、娘と体格の近い近所の小学3年生のお姉ちゃんが、自転車に乗っている姿を見ることでした。
スイスイ走っている姿を見ながら、
「あんなふうに乗れたらかっこいいね」
と話します。
娘も黙って自転車を目で追っていました。
次は私の番。
大人用の自転車に乗って、
「ここに足を置いて」
「前を見て」
「動き出したら、こうやって進むよ」
と、一つずつ動きを見せました。
人の動きを見ることも「運動を覚える手がかり」の一つ
以前の私は、ここを「ミラーニューロンが働くから」と説明したくなっていました。
ただ、そこまで単純ではありません。
人の動きを観察する「観察学習」は、運動技能の学習を助ける方法の一つとして研究されています。一方で、「似た子を見る→特定の神経細胞が働く→自分にもできるようになる」と一直線には説明できません。
また、「頭の中で動きをイメージする」運動イメージも研究されていますが、子どもでは年齢や個人差があり、研究全体の確実性もまだ十分高いとはいえません。
だから我が家では難しく考えず、
「まず、これから何をするのか見てみよう」
くらいに考えることにしました。
見るだけで自転車に乗れるようになるわけではありません。
でも、何をするのか全く分からない状態よりは、練習への入り口を作りやすかったように感じます。
「乗れたらどこに行きたい?」で、練習の目的が変わった
ここでもう一つ、娘に聞いてみました。
パパ「自転車に乗れるようになったら、一番にどこに行きたい?」
娘「んーっとね……大きな公園と、友達のお家!」
さっきまで「転ぶの嫌だ」と言っていた娘の表情が少し変わりました。
これは「この質問をすると脳の○○が働く」という話ではありません。
単純に、
「自転車の練習」ではなく、「自転車に乗って何をしたいのか」を親子で話せた
ことが良かったのだと思っています。
大人でも、ただ練習するより「これができたら○○したい」と目的が見える方が取り組みやすいことがありますよね。
少なくとも娘の場合は、
「やらされる練習」
から、
「公園や友達の家に行くための練習」
へ少し意味が変わったように見えました。
ステップ2|いざまたがると、ハンドルをギューッ!
いよいよ自転車にまたがってみます。
まだ走りません。
足を地面についたまま、ハンドルを握るだけです。
ところがここで、娘の動きが一変しました。
ハンドルを、
ギューッ!
肩にも腕にもかなり力が入り、上半身は前のめり。
(パパの心の声)
「おお……急に競輪選手のラストスパートみたいになったぞ」
思わず姿勢を直したくなりました。

でも、ここで一度「PTとして観察する側」に戻ってみます。
娘は自転車に乗る前から、
「転ぶのが怖い」
と言っていました。
そして、またがった途端に身体全体へ力が入った。
そこで私は、
「姿勢が悪いというより、怖くて身体を固めているのかもしれない」
と考えました。
これはあくまで、その場で私が立てた仮説です。
「怖い=この姿勢」と決めつけない
不安や転倒への恐怖などの「姿勢への脅威」が、筋活動や姿勢制御に影響することは研究されています。
ただし、
「怖くなると必ず肩が上がる」
「必ず前方に重心が移動する」
というほど単純ではありません。
2026年に発表された子どもと若年成人を比較した研究でも、姿勢への脅威によって恐怖感や身体の揺れなどが変化しましたが、反応には年齢差がみられています。なお、この研究の子どもは平均11歳台で、課題も自転車ではありません。娘の反応を直接説明する研究ではない点には注意が必要です。
つまり今回言えるのは、
「娘は怖がっていて、そのとき実際に身体へ強く力が入っていた」
というところまで。
「恐怖が原因でこの姿勢になった」とまでは断定しないようにしています。
私が直したのは「姿勢」より先に「安心感」だった
そこで娘に、
「背筋を伸ばして!」
「力を抜いて!」
と繰り返すのではなく、まず伝えたのは、
「最初はパパが後ろでしっかり支えるからね」
でした。
娘はすぐ、
「……ちゃんと持ってる?」
と私をチラ見。
「持ってるよ」
と答えて、自転車をしっかり支えます。
その状態で、
「一回、ふーっと息を吐いてみようか」
「肩も少し楽にしてみよう」
と声をかけました。
すると、少しずつハンドルを握る力が弱くなり、見た目にも肩や腕の力みが減ってきました。
上体も、最初より自然に起きています。
そこで、
「おっ、今の感じかっこいいよ!」
と声をかけると、娘はちょっと得意げな顔。
最初の「絶対無理!」という雰囲気とは、かなり違って見えました。
ここでも、
「骨盤が起きたから重心が安定した」
「体幹が使えるようになった」
とは考えません。
そこまで測定したわけではないからです。
私が確認できたのは、
ハンドルを強く握っていた状態から、少し力を抜いてまたがれるようになった
という変化でした。
自転車のバランスは「体幹」だけでは決まらない
自転車というと、「体幹が大事」と説明したくなるかもしれません。
もちろん身体の姿勢調整は関係します。
でも自転車のバランスは、それだけではありません。
自転車の研究では、ハンドル操作、車体の傾き、乗る人の身体の傾き、速度など、複数の要素を使いながらバランスを調整していることが示されています。初心者と経験者では、その使い方も異なります。
だから子どもがグラグラしていても、
「体幹が弱いから」
と一つの原因に決めつける必要はありません。
まだ自転車そのものに慣れていない。
ハンドル操作が分からない。
怖くて身体が固まっている。
速度が遅くてバランスを取りにくい。
さまざまな要素が重なっている可能性があります。
私も娘の動きを見ながら、一つずつ考えていくことにしました。
自転車を怖がる子に、我が家で試してよかった4つのこと
今回の経験から、同じように「乗りたいけど怖い」という子には、いきなりペダルをこぐ前にこんな方法も試せると思います。
- 実際に乗っている人を見る
「何をするのか」を知るところから始めます。 - 乗れたら何をしたいか聞いてみる
公園、友達の家、家族とのサイクリングなど、その子自身の目的を探します。 - 足を地面についたまま、まず自転車に慣れる
最初から走る必要はありません。 - 姿勢を直す前に、どこに力が入っているか観察する
「姿勢が悪い」で終わらせず、「なぜこうなっているんだろう?」と一度考えてみます。
もちろん、これで全員が同じ反応をするわけではありません。
子どもの怖さや慣れるペースには個人差があります。
嫌がっている日は、そこで終わる選択もありだと思っています。
練習前に安全面もチェック
自転車練習では、上達より先に安全です。
ヘルメットを正しく着用し、自転車やブレーキの状態を確認したうえで、交通のない安全な場所から練習を始めます。
警察庁も、幼児・児童が自転車を運転するときは、保護者が乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めることを示しています。
また、子どもの身体に対して自転車が大きすぎると、足を着くこと自体が難しくなります。
「怖がるから練習不足」と考える前に、自転車そのものが扱いやすい状態かも確認してみてください。
まとめ|「早くこいで!」の前に、子どもの怖さを観察してみる
今回の自転車練習で、娘がいきなり乗れるようになったわけではありません。
それでも、
「転ぶのが怖い」
と自転車から離れていた状態から、
「乗ってみる」
ところまでは進むことができました。
私自身も、
「どうすれば正しい姿勢になるか」
だけを見るのではなく、
「なぜ、この姿勢になっているんだろう?」
と考えることの大切さを改めて感じました。
理学療法士として身体を見る。
親として娘の言葉を聞く。
そして、うまくいかなければ方法を変える。
ネド家の自転車練習は、まだ始まったばかりです。
次はいよいよ動き出す段階。
ところがここでも、
「下を見ないと怖い!」
「ペダルが動かない!」
と新しい壁が待っていました。
次回は、視線と「最初のひとこぎ」をめぐる親子の試行錯誤を紹介します。
誤を紹介します。


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