「最初のひと漕ぎまではできるのに、そのあとが続かない」
補助輪なし自転車を練習していた小2の娘に、まさにこの壁がやってきました。
片方の足でペダルを踏む。
自転車がスッと前へ進む。
「いけた!」
……と思った次の瞬間。
もう片方の足をペダルに乗せようとして、
「おっとっと!」
自転車がふらつき、足を地面について終了。
何度やっても同じでした。
そして娘から、こんな苦情が。
「パパ!この自転車、足のところが逃げるんだけど!」
いやいや、ペダルは生きてないから逃げないよ(笑)。
でも、この一言を聞いて私は、
「強く漕げばいい」
だけでは解決しないのかもしれない、と考えるようになりました。
今回は、そんな「反対の足がペダルに乗らない問題」を、親子で失敗しながらどう練習したのかを紹介します。
私は普段、理学療法士として人の動きを見る仕事をしています。
とはいえ、子育てでは専門家だから一発で正解が分かるわけではありません。
今回もしっかり失敗しました。
最初のひと漕ぎはできた。でも次の足が間に合わない
これまでの練習で、娘は少しずつ補助輪なしの自転車に慣れてきました。
今回のスタート地点は、
片方のペダルを踏んで、自転車を前へ進めるところまではできる
という状態です。
次に必要なのが、
地面から離れたもう片方の足をペダルへ乗せること。
大人になると何気なくやっている動作ですが、改めて観察すると意外と忙しい。
スタート直後には、
- 自転車を前へ進める
- 姿勢を保つ
- ハンドルの向きを調整する
- 片足でペダルを踏む
- 反対の足を地面から離す
- その足をペダルの位置へ運ぶ
- そのまま左右交互のペダリングにつなげる
といった動きを短時間につなぐ必要があります。
自転車技能は年齢だけで決まるものではなく、経験によっても発達します。子どもでは運動だけでなく、周囲を見ることや状況を予測することなども含め、複雑な技能は段階的に身についていくことが報告されています。
だから、
「小学生なんだから、これくらいできるはず」
とは考えない方がよさそうです。
娘にとっては、この「もう片方の足を乗せる一瞬」が、今ちょうど難しいところだったのでしょう。
作戦1「もっと強く踏んで!」は失敗
最初に私が考えたのは、とても単純でした。
「最初のひと漕ぎをもっと強くすればいいのでは?」
少し勢いが出れば、その間に反対の足をペダルへ乗せる時間が作れるのではないか。
そう考えて、
「最初にグッと踏んでみよう!」
と声をかけました。
ところが……。
うまくいきません。
娘はペダルを強く踏もうとするほど、今度はそちらへ意識が向きます。
そして結局、反対の足を乗せる前に、
「おっとっと!」
少なくとも娘の場合、「もっと強く踏んで」という声かけだけでは解決しませんでした。
ここで、「小2だから筋力が足りない」と決めつけることもできません。
自転車の大きさ、サドルの高さ、ペダルの位置、タイミング、怖さ、これまでの経験など、いろいろな要因が関係する可能性があります。
だったら、もう少し動きをシンプルにしてみよう。
ここからが、理学療法士としてもう一度動きを見直したところでした。
理学療法士パパが気づいたのは「足を乗せる練習をほとんどしていない」
娘の動きを見ながら考えてみると、
私たちはこれまで、
「バランスを取ろう」
「前を見よう」
「最初のペダルを踏もう」
とは何度も練習していました。
でも、
「浮いている足をペダルへ乗せる」
という動作だけを練習したことは、ほとんどありませんでした。
理学療法士は、動作がうまくいかないときに、全体を眺めるだけではなく、
「どの部分で止まっているのか」
を細かく見ることがあります。
今回は、
「自転車に乗れない」
ではなく、
「スタート直後に、反対の足をペダルへ運ぶところで止まっている」
と考えてみました。
問題が少し具体的になりました。
作戦2 自転車を支えて「足を乗せること」だけ練習
そこで方法を変えます。
私は娘に、
「今は自転車に乗ろうとしなくていいよ。パパが支えるから、足をシュッとペダルに乗せるだけやってみよう」
と伝えました。
私が自転車を支え、娘がバランスをあまり気にしなくてもよい状態を作ります。
そして、
「せーの、シュッ!」
地面にある足をペダルへ。
元に戻して、
「もう一回、シュッ!」
またペダルへ。
これを何度か繰り返しました。
最初はペダルを探すような動きだったのが、少しずつスムーズになってきます。
ここで大切なのは、
「この練習をすれば必ず自転車に乗れる」わけではない
ということです。
運動の練習には、動作全体をそのまま練習する方法と、一部を取り出して練習してから全体へ戻す方法があります。
子どものジャグリングを使った研究では、学年によって部分練習と全体練習の効果が異なりました。つまり「分けて練習すれば何でも上達する」という単純な話ではありません。
一方で、子どもの自転車習得を調べた研究では、簡単な課題から段階的に進めること、子ども一人ひとりに合わせること、自転車を調整すること、本人の意欲や家族の支援などが重要な要素として挙げられています。
今回の娘には、
難しかった動作を一度シンプルにしたことが合っていた
のだと思います。
「できた!」でも、ここで終わりではない
足だけの練習が少し滑らかになったところで、もう一度本番です。
片方のペダルを踏む。
自転車が前へ進む。
そして……。
「シュッ!」
反対の足がペダルに乗りました。
「おっ、乗った!」
私の方がテンションが上がります。
娘もすぐに気づきました。
そのまま左右交互に、
ポン、ポン。
とペダルを踏んでいきます。
ただし、ここで大事なのは、
親がずっと支えていては、最終的な「自分で乗る」動作には戻れないこと。
最初はしっかり支える。
できてきたら少し支えを減らす。
最後は、本来の自転車の動きに戻す。
この流れで進めました。
練習中に一度成功したことと、本当に一人で安定してできるようになることは同じではありません。
焦らず、
「今日はここまでできた」
くらいで十分です。
「コンボつなげるゲームみたい!」
両足がペダルに乗ると、次は左右交互に漕ぎ続けます。
娘は、
「右、左、右、左……」
と繰り返しているうちに突然、
「パパ、これコンボつなげるゲームみたい!」
と笑いました。
普段遊んでいるゲームと、本人の中で何かがつながったのでしょう。
ここは、
「リズムゲームをしていたから自転車が上手になった」
という意味ではありません。
でも、
子ども自身が知っている遊びに置き換えて理解する
のは、親子で練習するときのヒントになりました。
私は「一定のリズムで漕いで」と説明するより、
「コンボ切らさないようにいってみよう!」
と声をかけました。
すると娘もニヤッ。
こういう子ども自身の言葉は、専門用語よりずっと強いことがあります。
子どもができないとき、「もっと頑張って」以外に考えたいこと
自転車だけでなく、
縄跳び、ボール遊び、鉄棒などでも、
子どもがうまくできないと、つい、
「もっとしっかり!」
「ちゃんと見て!」
「もう少し頑張って!」
と言いたくなります。
私も言います。
でも、うまくいかないときには、
「そもそも今、一度にやることが多すぎないかな?」
と見直してみる方法もあります。
たとえば、
「ボールを投げられない」
ではなく、
「足を踏み出すところ?」
「腕を振るところ?」
「狙った方向を見るところ?」
と分けてみる。
自転車なら、
「乗れない」
ではなく、
「スタート?」
「足をペダルへ乗せるところ?」
「左右に漕ぎ続けるところ?」
「ハンドル操作?」
と見てみる。
できない理由は、子どもによって違います。
だからこそ、
できない=能力が低い
ではなく、
今どこが難しいのかを親子で探してみる。
これが、わが家の「伴走型」の練習です。

他の家庭で試すなら「3段階」にしてみる
もし、
「最初のひと漕ぎはできるけれど、反対の足がペダルに乗らない」
という状態なら、わが家では次の順番がうまくいきました。
① 親が自転車を安定させる
まずは自転車全体を動かそうとせず、子どもが足の動きに集中しやすい状態を作ります。
② 地面の足→ペダルだけを数回練習する
「シュッ」など短い言葉で十分です。何度も長時間繰り返す必要はありません。
③ 全体のスタートへ戻し、少しずつ補助を減らす
部分練習だけで終わらず、「ひと漕ぎ→反対足→左右のペダリング」へ戻します。
うまくいかなければ、その日は終わってもOKです。
子どもの自転車習得に「○歳ならここまでできる」という一律の正解はありません。年齢だけでなく経験も関係するため、その子の今の状態に合わせて進めることが大切です。
練習前に確認したい安全ポイント
自転車練習では、技術より安全が先です。
わが家でも、
- ヘルメットを正しく着用する
- 車が来ない安全な場所を選ぶ
- 周囲に歩行者や障害物がないことを確認する
- 子どもの体格に自転車やサドル高が合っているか確認する
- 疲れたり嫌がったりしたら無理に続けない
ことを意識しています。
警察庁も、児童・幼児が自転車を運転するときには、保護者が乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めることを求めています。
また、自転車のサイズやブレーキなどに不安があれば、自転車店で確認してもらうのも一つの方法です。
まとめ|「自転車に乗れない」ではなく、どこで止まっているかを見る
今回、娘は、
最初のひと漕ぎ
↓
反対の足をペダルへ乗せる
↓
左右交互に漕ぐ
という流れの中で、真ん中につまずいていました。
私は最初、
「もっと強く漕げばいい」
と考えましたが失敗。
そこで、
「足をペダルへ乗せる」部分だけを一度取り出して練習し、そのあと全体の動きへ戻す
方法へ変更しました。
それが娘には合っていたようです。
理学療法士は、日本理学療法士協会でも「動作の専門家」と説明されています。
ただ、子育てでは専門知識だけで答えが出るわけではありません。
今回も、
観察して、
予想して、
失敗して、
やり方を変えて、
娘の言葉からまたヒントをもらいました。
「パパ、この自転車、足のところが逃げる!」
から始まった今回の練習。
最後には、
「コンボつなげるゲームみたい!」
に変わりました。
できなかった動きが、遊びの感覚につながった瞬間です。
次は、ペダルを漕げるようになった娘が直面した「ふらつきとハンドル操作」。
まだまだ、親子の自転車特訓は続きます。
両足で漕げるようになると、次はまっすぐ走る・曲がる課題が出てきました
参考にした主な資料
安全面については警察庁の自転車安全利用情報を参照しています。


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