子どもと生活していると、
「なんで、ここだけやりにくそうなんだろう?」
と思う瞬間がありませんか?
今回のきっかけは、娘が小学1年生だった頃の朝の玄関でした。
ランドセルを背負って、座った状態から立とうとした娘がひと言。
「パパー、ランドセルが重くて後ろに倒れそう〜!」
確かに見ると、いつもの立ち上がりより大変そう。
そこで今回は、
筋力をつけるのではなく、まず「どう立とうとしているのか」を一緒に見直してみました。
娘の場合は、「お辞儀」をイメージしただけで動きが変わりました。
ただし、これは「すべての子に効く方法」という話ではありません。
娘との実体験をもとに、ランドセルを背負った立ち上がりを運動学の視点から考えてみます。
「ランドセルが重くて後ろに倒れそう!」
朝、玄関で靴を履いた娘。
ランドセルを背負った状態で立ち上がろうとすると、
「よっこいしょ……」
と、いつもより苦戦しています。
そして、
「パパー、ランドセルが重くて後ろに倒れそう〜!」
確かにランドセルを背負っていないときとは、動きが違いました。
ランドセルは背中側にあります。
そのため、身体とランドセルを合わせて考えると、何も背負っていないときよりも重さのかかり方が後方へ変化します。
実際に子どもを対象として、背中に体重の10%・20%の荷重を加えて立ち上がりを調べた研究では、荷重が増えることで体幹の前傾や足関節など、立ち上がり方に変化が生じています。
つまり、
同じ子どもでも「何も背負っていないとき」と「ランドセルを背負ったとき」では、立ちやすい動き方が少し変わる可能性があります。
理学療法士のパパが最初に見たのは「筋力」ではなく「動き方」
子どもが立ちにくそうにしていると、
「脚の力が弱いのかな?」
と思うこともあるかもしれません。
でも、当時の娘を見て私が気になったのは筋力よりも、
「体が前に移動できているかな?」
というところでした。
椅子や玄関から立ち上がるとき、人は単純に真上へ伸びるわけではありません。
まず体幹を前へ動かし、その勢いを使いながら体を上へ持ち上げていきます。
股関節、膝、足首、体幹など、いろいろな部分が協力して行う動作です。
ランドセルという重さが背中側に加われば、普段と同じ感覚で立とうとしてもうまくいかないことがあります。
当時の私には、娘が少し体を起こしたまま頑張って立とうとしているように見えました。
そこで考えました。
「もっと前に体を移動したらどうだろう?」
「前に倒して」では伝わらない。そこで「お辞儀」
大人なら、
「体幹をもう少し前傾して……」
なんて言えば伝わります。
でも相手は小学1年生。
そんな説明をしても、
「???」
ですよね。
そこで、娘がすでに知っている動きに置き換えました。
パパ
「後ろにランドセルがあるからね。立つ前に、学校でする『お辞儀』をしながら立ってみて!」
娘
「えー?こう?」
お辞儀をしてから……
スッ。
娘
「あ、立ちやすくなった!」
おお。
これは分かりやすかったようです。
なぜ「お辞儀」で立ちやすくなった?
ここは理学療法士として少しだけ解説します。
ポイントは、
「お尻の筋肉を使ったから」だけではありません。
立ち上がりは、股関節、膝、足首、体幹などを組み合わせて行う動作です。
体幹を前に傾けると、立ち上がるために必要な前方への重心移動を作りやすくなります。
背中に荷重を加えた子どもの立ち上がりを調べた研究でも、荷重によって体幹前傾などの動きが変化しています。
なので今回の娘については、
「筋力が足りなかった」というより、ランドセルを背負った状態に合わせて動き方を少し変えたら立ちやすくなった
と考える方が自然だと思っています。
もちろん、これは私が娘を観察して考えた仮説です。
子どもの立ち上がり方には年齢や体格、座る場所の高さ、その日の荷物などによって個人差があります。
もう一つ試した「足の裏のスイッチ」
お辞儀だけでも立ちやすくなりました。
そこで、もう一つ娘に声をかけてみました。
パパ
「次は立つ前に、足の裏で床を感じてみよう。足の裏のスイッチ、オン!ってしてからお辞儀してみようか」
娘
「足の裏のスイッチ、オン!」
そして、お辞儀をして……
スッ。
娘
「わ!もっと立ちやすくなった!」
こういう謎の合言葉、小学生には意外と強いですね(笑)。
「足の裏のスイッチ」で脳が変わった?
ここは少し慎重に考えます。
足の裏には、床との接触や圧を感じる感覚があります。
足底から得られる感覚情報は、姿勢を保ったり体を動かしたりするときに利用されていることが知られています。
ただし、
「足の裏を意識したから脳が瞬時に身体を再計算して、立ち上がりが改善した」
とまでは今回の体験から判断できません。
娘にとっては、
「足を床につける」
↓
「お辞儀する」
↓
「立つ」
という順番が分かりやすくなった可能性もあります。
私が大事だと思ったのは、脳の難しい仕組みを説明することではなく、
娘が自分の体を動かしやすい“合図”を一緒に見つけられたことでした。
「足裏スイッチ+お辞儀」は娘には合っていた
最後にもう一度。
パパ
「足の裏のスイッチ、オン!」
娘
「オン!」
パパ
「そこからお辞儀!」
娘
「はい!」
スッ。
さっきよりスムーズ。
パパ
「すごい!めちゃくちゃ立ちやすそう。これ学校でもやってみてね!」
すると娘。
「んー、覚えてたらね」
ドヤ顔。
パパの心の声。
(……あ、これ絶対学校ではやらないやつだな)
こうして我が家の「ランドセル立ち上がり研究」は終了しました。
家で試すなら「筋力」より先に3つを観察
同じように、ランドセルを背負った子どもが立ちにくそうにしていたら、いきなり「脚を鍛えよう」と考えなくても大丈夫です。
まずは、
- 足の裏がしっかり床についているか
- 立つ前に体を少し前へ動かせているか
- ランドセルそのものが重すぎたり、背中から大きく離れたりしていないか
を見てみる方法があります。
そして、
「前に倒して!」
ではなく、
「お辞儀してから立ってみよう」
くらいの言葉にすると、子どもには伝わりやすいかもしれません。
娘には「足の裏のスイッチ」も分かりやすい合図になりました。
ただし、この方法がすべての子どもに合うわけではありません。
「やりにくい」と言えば別の方法を試せばOKです。

動き方より先に「ランドセルが重すぎない?」も確認
ここは大切です。
子どもがランドセルをつらそうにしているとき、
「上手に体を使えば大丈夫」だけで終わらせないようにしています。
荷物そのものが多ければ、まず減らせないか確認します。
肩ベルトの長さやランドセルの位置、中身の入れ方を見直すだけでも変わる場合があります。
米国小児科学会(AAP)の保護者向け情報でも、荷物を体の近くに配置することや、バッグを適切にフィットさせることなどが勧められています。また、前傾しないと背負えないほど重い場合には重量を見直すよう案内されています。
一方で、
「ランドセルが重い=腰痛になる」
と単純に考えるのも正確ではありません。
学校鞄の重さと腰痛について調べた研究では、ランドセル・学校鞄の重量だけを腰痛の原因とする十分な根拠は確認されていません。
数字だけではなく、
「本人が重いと言っていないか」
「歩きにくそうではないか」
「痛みがないか」
といった子どもの様子を見ることも大切だと思っています。
痛みが続く、しびれがある、普段の生活でも動きにくいなど気になる症状がある場合は、動き方だけで解決しようとせず、医療機関などへの相談も検討してください。
日常の「立ちにくい」も、運動を考える材料になる
今回やったことは、特別なトレーニングではありません。
朝の玄関で娘が、
「立ちにくい!」
と言ったところから始まっただけです。
でも、
「頑張って!」
で終わらず、
「どこがやりにくいんだろう?」
と一緒に試してみると、子どもの動きを観察するきっかけになります。
自転車や縄跳びなどのスポーツでも、
「できない=筋力がない」
とは限りません。
姿勢なのか。
タイミングなのか。
道具なのか。
説明の仕方なのか。
一つずつ試していくと、子どもに合った方法が見つかることがあります。
もちろん、今回の立ち上がり練習をすれば自転車や縄跳びが上手になる、という意味ではありません。
でも、
「できない動きを細かく観察して、分かりやすい方法に変えて試してみる」
という親子の取り組み方は、いろいろな運動で使えそうです。
まとめ|娘に必要だったのは「もっと頑張る」ではなく「立ち方を変えてみる」だった
小学1年生だった娘が、
「ランドセルが重くて後ろに倒れそう〜!」
と言った朝。
我が家で試したのは、
「足の裏のスイッチを入れる」
そして、
「お辞儀してから立つ」
という方法でした。
娘の場合は、これだけで立ち上がりがスムーズになりました。
ただし、「この方法が正解」ということではありません。
子どもの体格やランドセルの重さ、座る場所、動き方はそれぞれ違います。
理学療法士として思うのは、
できない動きをすぐに「筋力不足」と決めつけず、一度その動きを観察してみること。
そして親として思うのは、
正しい方法を教えることより、一緒に「あれ?こっちの方がやりやすい?」と試す方が楽しいこともある。
ということです。
今回も娘に教えたつもりが、最後は私の方がいろいろ教えてもらいました。
次回は、
「立てた。でも歩くとランドセルに負ける!」
立てるようになった次は、ランドセルを背負った歩き方を観察しました


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