「パパ、ランドセルが重すぎて、後ろに引っ張られる〜!」
娘が小学1年生だった頃のことです。
登校前の玄関でランドセルを背負った娘が、後ろへひっくり返りそうになっていました。
ランドセルの中には教科書、ノート、タブレット。
さらに水筒も持っていきます。
毎日見慣れているランドセルですが、実際に持ってみると、
「これ、小学1年生が背負って歩くには結構重いな……」
と感じました。
私は普段、理学療法士として人の姿勢や動きを見ています。
そこで最初は、
「歩き方を少し変えれば、楽になるんじゃないか?」
と考えました。
ところが、実際に娘に教えてみると、そんなに単純ではありませんでした。
今回は、重いランドセルで歩きにくそうだった娘を観察しながら、
荷物の入れ方 → ランドセルの調整 → 歩き方の声かけ
の順に試していった話です。
先に結論を書くと、ランドセルが重そうなときは、歩き方を直すより先にランドセル側を確認することが大切でした。
「ランドセルが重い!」娘はどんな歩き方をしていた?
ランドセルを背負った娘を横から見てみました。
すると、
- ランドセルに後ろへ引っ張られているように見える
- あごが少し上がる
- 足取りが重そう
- 肩も左右に揺れている
という状態でした。
ここで注意したいのが、「重心が後ろにある」と断定しないことです。
家の玄関で私が見ているだけなので、本当に身体の重心がどこにあったのかを測定したわけではありません。
あくまで、
「後ろへ引かれているような姿勢に見えた」
という親として、そして理学療法士としての観察です。
研究では、子どもや青少年が荷物を背負うことで、立っている姿勢や歩く速さ、歩幅などが変化することが報告されています。
ただし、「重ければ重いほど必ず姿勢が悪くなる」というほど単純な関係でもありません。
体格、荷物の重さや位置、ランドセルの形、歩く速さなど、さまざまな条件が関係すると考えられます。
最初の失敗。「姿勢を直せばいい」と考えてしまった
娘を見た私は、最初こう考えました。
「後ろへ引っ張られているなら、少し前に体を持っていけばいいのでは?」
そこで生まれたのが、
「おへそビーム」
でした。
「おへそからビームを出して、前にいるパパに当てる感じ!」
さらに、
「足だけじゃなくて、みぞおちから前に進む感じで歩いてみて!」
と伝えました。
理学療法士としては、足だけではなく身体全体の動きをイメージしてもらおうと思ったわけです。
ところが――。
「パパ、ロボットみたいになっちゃう!」
娘はカチコチになりました。
おへそを意識して、みぞおちも意識して、足も動かして……。
考えることが増えすぎたようです。
「あれ? これは教えすぎたかも……」
ここでいったん作戦変更です。
理学療法士パパ反省。「歩き方より先に見るところがある」
改めて考えると、娘は重い荷物を背負って歩きにくいと言っています。
それなのに私は、ランドセルそのものより先に「歩き方」を変えようとしていました。
まず見るべきは、こちらでした。
① そもそも荷物が重すぎない?
まずランドセルの中身を確認します。
家庭で使わない物まで入ったままになっていないか。
プリントや使わない文房具がたまっていないか。
学校のルール上、置いて帰れる物はないか。
文部科学省も、児童生徒の携行品が過重になることへの懸念から、家庭学習で使用しない教材を学校に置くなど、学校側で重さや量に配慮するよう示しています。
つまり、
「重いランドセルを上手に背負わせる」だけでなく、「そもそも減らせないか」を考えることも大切
ということです。
② 重い物が背中から離れていない?
次に見たのが荷物の位置です。
タブレットや重い教科書などは、できる範囲で背中に近い位置へ。
荷物が身体から離れるほど、後ろへ引っ張られるような感覚につながることがあります。
米国小児科学会(AAP)も、重い物を身体に近い位置へ入れ、左右に荷物を分散することを勧めています。
娘のランドセルも、
「これはこっち。こっちは軽いから外側」
と、一緒に入れ直してみました。
ランドセルの中身を整理するだけなら、朝でも比較的簡単にできます。
③ 水筒を片側だけに掛けていない?
「ねえパパ、水筒ここに掛けていい?」
娘が指さしたのは、ランドセルの片側でした。
ここも一度確認。
片側だけに重い物があると、左右で荷重条件が違ってきます。
だからといって、「片側に水筒を掛けたら必ず身体が傾く」とまでは言えません。
ただ、左右差や歩いたときの揺れを減らすという意味では、可能なら重さが一方だけに偏りすぎないようにした方がよさそうです。
ランドセルの形や学校の決まりもあるので、それぞれの家庭で調整できる範囲で十分です。
④ 肩ベルトは合っている?
もう一つ確認したのが肩ベルトです。
成長期の子どもは身体が変わっていきます。
以前ちょうどよかったベルト位置が、いつの間にか合わなくなっていることもあります。
左右の肩ベルトが大きく違っていないか。
ランドセルが背中から大きく離れていないか。
歩くたびに大きく左右へ揺れていないか。
痛かったり食い込んだりしていないか。
この辺りを確認しました。
ランドセルは、「一度調整したら6年間そのまま」ではなく、ときどき背負っている姿を見るのがよさそうです。
ランドセルは体重の何%までなら大丈夫?
ランドセルの重さを調べると、
「体重の10%まで」
「15%以内」
といった数字を目にすることがあります。
米国小児科学会は、バックパックは子どもの体重の15%を超えないことを一つの目安として示しています。
一方、研究全体を見ると、
「○%以下なら絶対に安全」
という明確な境界線が確立しているわけではありません。
また、学校かばんが重いことだけで、将来の腰痛が起こると断定できるほどの根拠もありません。
そのため我が家では、数字だけを見るより、
「後ろへ強く引っ張られていないか」
「前へ大きく傾かないと歩けないか」
「痛い・しびれる・すごく疲れるなどの訴えがないか」
「普段どおり歩けているか」
という子どもの様子も一緒に見ることにしました。
もう一度「おへそビーム」。今度は前傾させるためじゃない
ランドセルの中身と位置、肩ベルトを確認したあと、もう一度歩いてもらいました。
ここで「おへそビーム」が再登場します。
ただし、最初とは意味を変えました。
最初の私は、
「おへそを前に出して、少し前傾すればいい」
と考えていました。
でも、荷物を支えるために大きく前傾しなければいけないなら、そもそも荷物が重すぎたり、ランドセルが身体に合っていなかったりする可能性があります。
そこで今度は、
「前に倒れなくていいよ。おへそからパパにビームを当てながら、そのまま一緒に前に進んでみよう」
と伝えました。
「みぞおちから歩く」も同じです。
みぞおちを意識すれば「インナーマッスルが働く」という意味ではありません。
娘が足だけを頑張って動かそうとしていたので、
身体全体で前へ進むイメージを持ってもらうための、我が家なりの声かけ
として使いました。
「ロボットみたい」から「ランドセルがついてくる!」
「おへそビーム……」
娘が歩きます。
さっきより考えることを減らし、
「前に倒れる」
ではなく、
「ランドセルと身体が一緒に進む」
くらいのイメージにしました。
何度か玄関前を行ったり来たりしていると、最初よりも後ろに残っているように見える姿勢が減り、前へ進む動きがスムーズになってきました。
すると娘が、
「あ!パパ、これすごい!」
そして一言。
「ランドセルがついてくる!」
なるほど。
娘にとっては、「正しい姿勢」よりも、この感覚の方が分かりやすかったようです。
私から見ても、最初より歩きやすそうに見えました。
ただし、
- 荷物を整理した
- 荷物の位置を変えた
- 左右差を減らした
- 肩ベルトを確認した
- 声かけも変えた
- 何度か歩いて慣れた
と複数のことをしています。
そのため、
「おへそビームのおかげで改善した」
とは言えません。
ここは、親子で試した結果として残しておきたいと思います。
子どもが「ランドセルが重い」と言ったら、我が家ならこの順番
今回の経験から、我が家では「姿勢を直そう」とする前に、次の順番で見ることにしました。
1.中身を確認する
→ 2.重い物をできるだけ背中側へ
→ 3.左右の重さや揺れを確認
→ 4.肩ベルトとランドセルの位置を確認
→ 5.実際に少し歩いてもらう
→ 6.必要なら子どもに伝わる簡単な声かけを試す
大切なのは、
「背筋伸ばして!」
「ちゃんと歩いて!」
と子どもだけに頑張らせないこと。
まず、頑張らなくても歩きやすい条件にできないかを大人が一緒に探すことだと思います。
重いランドセルは「体幹トレーニング」ではない
以前の私は、
「毎日の登下校もバランスの練習になるかも」
と考えていました。
でも、ここも分けて考える必要があります。
荷物を背負えば、身体は倒れないように姿勢を調整します。
だからといって、
重いランドセルを背負って歩けばバランス能力や体幹が鍛えられる
とは言えません。
通学はトレーニングではなく、まず安全に学校まで移動する時間です。
その一方で、親にとっては、
「今日は少し傾いているな」
「ランドセルが揺れているな」
「昨日より重そうだな」
と、子どもの動きを観察するきっかけにはなります。
私は理学療法士なので、どうしても動きを細かく見てしまいます。
でも結局、一番大事だったのは専門的な分析より、
「重い」と言った娘の言葉から始めること
でした。

まとめ|歩き方を直す前に、ランドセルを一緒に見てみよう
「パパ、ランドセルが重すぎて、後ろに引っ張られる〜!」
この一言から始まった我が家のランドセル実験。
最初の私は、歩き方を変えれば解決すると思っていました。
でも実際には、
歩き方より先に、荷物の量・入れる位置・左右差・肩ベルトを見る。
そのうえで必要なら、子どもに分かりやすい言葉を一緒に探してみる。
この順番の方がよさそうです。
「おへそビーム」も「みぞおちから歩く」も、医学的に決められた正しい歩き方ではありません。
娘と私が試行錯誤する中で、娘には比較的伝わりやすかったイメージです。
だから別の子には、
「ランドセルと一緒に歩こう」
「頭を上から糸で引っ張られている感じ」
など、別の言葉の方が合うかもしれません。
子どもの身体や感じ方は一人ひとり違います。
まずは、
「この子は今、何が歩きにくいんだろう?」
と一緒に観察してみる。
ランドセルも、そんな親子の小さな実験材料の一つになるのかもしれません。


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