「わー、滑るー!」
公園横のアスファルトで、娘とインラインスケートの練習をした時のことです。
初めてインラインスケートを履いた娘は、立つだけでも不安定。
私が横から支えて立とうとしましたが、スケートが後ろに滑って、そのまま尻もちをついてしまいました。
「後ろに倒れそう」
実際に後ろへ転んでしまったこともあり、最初は立っているだけでも難しい状態でした。
私は普段、病院で理学療法士として働いています。
しかし、娘と一緒に練習してみると、思っていたようには進みません。
そこで今回は、いきなり滑るのではなく、まずはその場で安定して立つことを目標にしました。
支える位置を変え、姿勢を調整し、少しずつ足に体重をかける練習へ。
最終的には、その場で足踏みまでできるようになりました。
今回は、最初に転んでしまったところから、足踏みができるようになるまでの親子の練習記録です。
インラインスケートを履いて立ったら、いきなり後ろへ転んだ
練習したのは、公園横のアスファルトです。
インラインスケートは、普通の靴とは違って靴底に車輪が一直線に並んでいます。
娘も履いた直後から、足元が滑る感覚に戸惑っていました。
私が横から支えながら立とうとしたところ、足が後ろへ滑り、そのまま尻もちをついてしまいました。
最初の失敗は、支えていれば大丈夫だろうと思っていたことです。
横から支えていても、後方への動きを十分に防ぐことはできませんでした。
そこで、まずは娘の後ろから支える方法に変更しました。
転倒した後の練習では、滑ることよりも、娘が安心して立てる状態をつくることを優先しました。
後ろに倒れそうな時、姿勢と重心を見直した
娘を支えながら立っていると、後ろへ倒れそうになる場面がありました。
理学療法士として考えたのは、姿勢と重心の位置です。
体を少し前に傾けてみる
まず試したのは、体幹を少し前に傾けることでした。
体幹とは、お腹や背中を含む胴体の部分です。
スケートに慣れていない時は、体が後ろへ傾くと、車輪が前方へ動いて足がすくわれるように転ぶことがあります。
そこで、体を少し前へ傾けるようにしました。
ただし、前に深くかがめばよいわけではありません。
大切なのは、上半身だけを折り曲げるのではなく、足元の位置に対して体のバランスを整えることです。
かかと寄りの重心を少し前へ
次に意識したのは、体重をかける位置です。
かかと側に偏っていた体重を、少しつま先側へ移すようにしました。
ここでいう重心とは、簡単に言えば、体の重さをまとめて考えた時の中心です。
実際には重心と足裏の圧力の中心は異なりますが、子どもに説明する際は、足のどこに体重を感じるかを意識する方が分かりやすいと考えました。
つま先だけに乗るのではなく、前後に偏りすぎない姿勢を探していきます。
すると娘から、
「あ。なんか後ろに倒れなくなってきた」
という言葉が聞かれました。
今回の娘の場合、姿勢や体重をかける位置を少し変えたことが、立ちやすさにつながったのかもしれません。
もちろん、インラインスケートの安定性は足首の位置やスケートのフィット感、地面の状態などにも左右されます。
今回の変化を、重心移動だけの効果だと断定することはできません。
立てるようになったら、次は膝を曲げる練習
少しずつ立つことに慣れてきたので、次は膝を軽く曲げる練習に進みました。
ところが娘は、
「膝曲げるの怖いよう」
と話しました。
せっかく立てるようになったのに、膝を曲げると、またバランスが崩れそうに感じたのかもしれません。
なぜ膝を曲げるのか?
インラインスケートでは、膝を少し曲げる基本姿勢が勧められています。
膝や股関節を適度に曲げることで、体の位置を調整しやすくなり、前後左右の揺れにも対応しやすくなると考えられます。
最初はほんの少し曲げるところからで十分です。
娘も少しずつ慣れ、
「これぐらい曲げればいいんだね」
と話すようになりました。
最初からきれいな姿勢を求めるのではなく、子ども自身が動ける範囲を確かめることが大切だと感じた場面でした。
足をV字にして、左右へ体重を移す練習
立つことと膝を曲げることに慣れてきたところで、次は足踏みに挑戦しました。
しかし、娘からは、
「足踏み怖い」
という反応。
両足で立つことと、片足を持ち上げることは、難しさが違います。

なぜ足踏みは難しいのか?
普段の歩行でも、片足を持ち上げる時には、反対側の足へ体重を移しています。
インラインスケートでは、その支える足の下にも車輪があります。
そのため、足を持ち上げるタイミングや体重を移す方向がうまく合わないと、バランスが崩れやすくなると考えました。
今回の娘も、筋力だけの問題ではなく、体重移動のタイミングや滑る感覚への慣れが関係していた可能性があります。
まずは足をV字にして荷重練習
そこで行ったのが、足をV字にして体重をかける練習です。
両足のかかと側を比較的近づけ、つま先を少し外側に向けます。
この形は、インラインスケート初心者の立位や歩行練習でも使われるVスタンスです。
無理に大きく開かず、足首や膝が自然に向く範囲で行います。
まずは両足で姿勢を安定させ、そこから少しずつ左右へ体重を移します。
片足を高く上げる前に、反対側の足で支える感覚を確かめる練習です。
その後、娘は足を持ち上げられるようになり、
「ここまで上げれるようになったよ」
と話しました。
最初は足踏みを怖がっていましたが、体重移動の練習を挟むことで、少しずつ足を上げられるようになりました。
理学療法士パパが意識したのは、介助を急に減らさないこと
今回の練習で、私が特に意識したのは介助の方法です。
理学療法士としてリハビリに関わる時も、動くことへの不安が強い場合には、必要な介助を行いながら練習することがあります。
今回も、最初は介助量を多めにして、慣れてきたら徐々に減らす方法を取りました。
介助量とは、簡単に言えば、大人がどのくらい体を支えるかということです。
初めから自分で立つことを求めるのではなく、まずは支えられた状態で立つ感覚を経験する。
次に、少しずつ子ども自身がバランスを取る機会を増やしていく。
そんな考え方で練習を進めました。
ただし、介助を多くすれば必ず運動を覚えやすくなるわけではありません。
運動学習の研究では、身体的な補助を受け続けると、自分で動きを調整する練習が不足する可能性も指摘されています。
今回の目的は、介助によってすべての動きを完成させることではなく、娘が安心して、自分で体重を移す経験を増やすことでした。
どの程度の介助が適切かは、子どもの不安や動作能力によって変わると考えられます。
最初は怖かった足踏みも、少しずつできるようになった
練習を続けるうちに、娘は少しずつその場で足を持ち上げられるようになりました。
そして、
「怖さが減ったー」
と話しました。
最初は立っているだけで後ろへ転んでしまった娘。
膝を曲げることも怖がり、足踏みにも不安がありました。
それでも、支え方を変え、姿勢を調整し、体重移動の練習を挟むことで、その場で足踏みができるところまで進みました。
今回分かったのは、滑る練習を急がなくても、立つことや足踏みだけで取り組める課題がたくさんあるということです。
まだ滑走を十分に練習した段階ではありません。
それでも、娘自身が怖さの変化を感じられたことは、次の練習につながる経験だったと思います。
家庭でインラインスケートを練習する時のポイント
今回の経験から、初めてインラインスケートに挑戦する子どもには、次のような順番が一つの参考になると考えました。
- まずは支えがある状態で立つ。 不安が強ければ、芝生など車輪が転がりにくい平らな場所で基本姿勢を確認する。
- 姿勢を調整する。 体を少し前に保ち、膝を軽く曲げる。足の前後に体重が偏りすぎないようにする。
- 足をV字にして立つ。 つま先を自然に外へ向け、両足で安定して立てる位置を確認する。
- 左右へ少しずつ体重を移す。 大人が支えながら、片側の足に体重をかける感覚を確かめる。
- 小さな足踏みに挑戦する。 足を無理に高く上げず、本人の怖さに合わせて少しずつ進める。
これは今回の娘との練習をもとに整理した方法で、すべての子どもに同じ順番が適切という意味ではありません。
怖さが強い場合には、前の段階へ戻ることも選択肢です。
安全面|転倒することを前提に準備する
インラインスケートは、立っているだけでも転倒する可能性があります。
今回も実際に、最初の立位で後方へ転んでしまいました。
安全のためには、練習を始める前の環境と装備の確認が重要です。
- ヘルメット・手首・膝・肘の保護具を装着する。 サイズや固定具を確認し、ずれないようにする。
- 平坦で乾いた、滑らかな場所を選ぶ。 砂利や小石、路面のひび割れ、傾斜、水たまりを避ける。
- 車や歩行者と交錯しない場所で練習する。 公園横でも、通行の妨げにならず、スケートが許可されている場所を選ぶ。
- 保護者自身も安定した姿勢で介助する。 子どもに引っ張られて一緒に転ばないよう、位置を調整する。
- 無理に進めない。 強い恐怖や痛みがある時は練習を中断する。
米国消費者製品安全委員会(CPSC)や米国小児科学会の保護者向け情報でも、保護具の使用、平坦で交通のない練習場所、段階的な練習が推奨されています。
なお、滑走へ進む前にはブレーキによる停止方法も確認しておく必要があります。
今回の立位保持編は、まだ安全に滑って止まれるようになったことを示すものではありません。
まとめ|滑る前に、まずは立つことから
今回のインラインスケート練習では、最初に横から支えていた娘が後ろへ転んでしまいました。
そこから後方からの介助に変更し、体を少し前に保つこと、膝を軽く曲げること、V字の足で体重を移すことを試しました。
その結果、娘は少しずつ自信をつけ、その場で足踏みまでできるようになりました。
「怖さが減ったー」
この言葉が、今回の練習での一番の変化だったと思います。
理学療法士として姿勢や重心を考えることも大切ですが、実際に子どもと練習してみると、怖さや慣れの程度に合わせて方法を変える必要があると感じました。
次回は、立つことと足踏みの練習から一歩進んだ、インラインスケートの滑走編です。
親子で試行錯誤しながら、少しずつ進めていきたいと思います。


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