「パパ!明日、図工でペットボトルがいるんだって!」
小学1年生になった娘が、日曜日の夜8時に突然言い出しました。
「えっ!?明日!?」
慌ててランドセルを開けると、奥の方からクシャクシャになった週予定表が出てきました。
そこには、確かに月曜日の持ち物として「ペットボトル」「ひも」「きれいな箱」の文字。
もう少し早く教えてくれたら……。
そう思った私は、娘にプリントを早く出すよう何度も注意するようになりました。
ところが、ある日娘からこんな言葉が返ってきました。
「だってパパ、プリント見せると怒るもん……」
この言葉を聞いて、私はハッとしました。
病院で理学療法士として働き、普段は患者さんの行動や周囲の環境を観察している私。
それなのに、家では娘の行動を注意することばかり考えていたのです。
今回は、学校のプリントをなかなか出さなかった娘と、私が接し方を変えるきっかけになった出来事を紹介します。
小学校入学後、学校のプリント管理が想像以上に大変だった
娘が小学校に入学して1か月ほど経った頃。
少しずつ学校生活に慣れてきた一方で、私たち親には新しい困りごとがありました。
それが、学校から配られるプリントの管理です。
保育園では、アプリやメールで先生から連絡が届いていました。
しかし、娘の小学校では、紙のお便りを子どもがランドセルに入れて持ち帰る機会が多くなりました。
例えば、
- 週予定表や時間割
- 翌週の授業で使う持ち物
- 提出期限のある書類
- 学級通信や保健だより
- 宿題のプリント
などです。
もちろん、小学校によって連絡方法は異なります。
ただ、わが家では娘がプリントを出してくれないと、親が必要な情報を確認できないことがありました。
特に困るのが、授業で使う材料の準備です。
そして、ついに事件が起きました。
日曜夜8時の悲劇!図工の材料がない
その日は日曜日。
家族でテレビを見て、そろそろ翌日の準備をしようとしていた夜8時頃のことです。
娘が時間割をそろえながら、突然こう言いました。
「パパ!明日、図工でペットボトルと飾り付けのひもがいるんだって!」
私は一瞬、言葉が出ませんでした。
「えっ、明日?それ、いつ先生から言われたの?」
ランドセルの中を確認すると、教科書の下から折れ曲がった週予定表が出てきました。
そこには、
月曜日の持ち物:ペットボトル(洗って乾かしたもの)、モールやひも、きれいな箱
と書かれていました。
「なんで今言うんだーーー!」
思わず声を上げてしまいました。
しかも、タイミングが悪いことに、ペットボトルは金曜日の資源ごみに出したばかり。
飾り付けに使えそうなひもも、すぐには見つかりません。
結局、私はパジャマの上から上着を羽織って、夜のコンビニへ。
ペットボトル飲料を買い、家に帰って中身を飲み、ほかの材料もあちこち探すことになりました。
家の引き出しを開けたり、使えそうなひもを探したり……。
翌日の準備をするだけで、夜は大騒ぎです。
このとき私は、
「学校のプリントは、帰ったらすぐに出してもらわないと困る!」
と強く思いました。
ただ、問題はここからでした。
「プリント出した?」と聞くほど、娘は出さなくなった
日曜日の出来事があってから、私は娘にプリントを出すよう、以前より厳しく言うようになりました。
「今日、プリント出した?」
「大事なお知らせはない?」
「提出期限が過ぎたら困るでしょ!」
仕事でスケジュールを確認するように、娘にも報告を求めていました。
私としては、もう日曜夜に慌てたくなかったのです。
でも、娘にとって学校から帰った時間は、ようやく家でゆっくりできる時間。
それなのに、帰ってきて早々にプリントの確認を求められる。
しかも、プリントを出せば内容をチェックされ、ときには注意される。
そんな状況になっていました。
ある日、娘がポツリと言いました。
「だってパパ、プリント見せると『字が汚い』とか『これ明日までじゃないか!』って怒るもん……」
言われてみれば、そのとおりでした。
娘は学校のプリントを持ち帰っている。
でも、私に見せると注意されることがある。
私は、娘がプリントを出さないことばかり気にしていました。
けれど、娘がプリントを見せたくなくなる理由を、自分で作っていたのかもしれません。
親として、少し反省した出来事でした。
理学療法士パパとして考えた「できない理由」
私は病院で理学療法士として働いています。
普段、患者さんが何かの動作をうまくできないときには、「もっと頑張ってください」と言うだけでなく、なぜ難しいのかを考えます。
身体の状態だけでなく、周囲の環境や、取り組む手順にも目を向けます。
今回のプリント管理も、少し似ているのではないかと考えました。
もちろん、学校のプリントを出すことは、運動機能の問題ではありません。
心理や発達について、今回の娘の行動だけから専門的な結論を出せるわけでもありません。
ただ、ひとつの行動を細かく分けて考えると、気になることがありました。
「プリントを出す」だけでも、いくつもの作業がある
大人にとっては簡単に思える、学校のプリント管理。
しかし、子どもが自分で管理しようとすると、
- 学校でもらったプリントを覚えておく
- ランドセルの中にしまう
- 家に帰って取り出す
- 親に渡す
- 必要に応じて翌日の準備につなげる
という複数の作業があります。
さらに、遊びたい気持ちや学校での疲れもあるでしょう。
娘の場合、どの部分が一番難しかったのかは分かりません。
ただ私は、こう考えるようになりました。
「出しなさい」と言うだけでなく、娘が出したくなるような関わり方はできないだろうか?
ここで転機になったのが、ある一枚のプリントでした。
娘が自分から持ってきた「保健だより」
ある日のことです。
娘が珍しく、自分から一枚のプリントを持ってきました。
それは、保健だよりでした。
「パパ見て!手洗いの仕方が描いてあるの!」
嬉しそうに話し始めた娘。
「今日ね、学校でみんなで練習したんだよ!」
「ハッピーバースデーの歌を2回歌うくらい洗うんだって!」
娘は、学校で習った手洗いの方法を私に教えてくれました。
ちなみに、歌を2回歌うというのは、手を洗う時間を覚えるための目安として紹介されている方法です。手のひらだけでなく、指の間や手首なども丁寧に洗うことが大切とされています。
私は、その日の娘の話に乗ってみることにしました。
「へえ〜!そうなんだ!」
「えっ、手首まで洗うの?パパにも教えてくれる?」
すると娘は、得意げに手洗いの方法を実演してくれました。
「ここも洗うんだよ!」
学校で習ったことを、私に教えてくれる娘。
その様子が、とても楽しそうだったのです。
そこで私は、何気なく聞いてみました。
「ほかにも面白いことが書いてあるプリント、あるかな?」
すると娘は、急いでランドセルに戻りました。
そして、ほかのプリントもまとめて持ってきてくれたのです。
学級通信を一緒に読むと、娘の話が止まらなくなった
娘が持ってきたプリントの中には、学級通信もありました。
私が一緒に読んでいると、娘がある部分を指差しました。
「あ、これ!今日の休み時間にドッジボールしたやつだ!」
「〇〇君がね……」
そこから、学校での出来事を次々と話してくれました。
どんな遊びをしたのか。
友達と何があったのか。
学校では何が楽しかったのか。
私は娘の話を聞きながら、あることに気づきました。
これまで私は、学校のプリントを「親が確認しなければいけない書類」として見ていました。
でも娘にとっては、少し違っていたのかもしれません。
保健だよりは、学校で習ったことをパパに教えるきっかけ。
学級通信は、友達との楽しい出来事を思い出すきっかけ。
つまり、同じプリントでも、親と子どもでは見えているものが違ったのです。
私が欲しかったのは「明日の持ち物の情報」。娘が話したかったのは「今日の学校の出来事」。
この違いに気づけたことが、わが家にとって大きな転機になりました。
「プリントを出しなさい」から「一緒に読もう」へ
それから私は、娘への声のかけ方を変えました。
以前は、
「大事なプリント出して!」
「明日の持ち物は?」
と確認していました。
でも、その言い方では、娘にとってプリントを出す時間が注意される時間になってしまいます。
そこで、こんな言い方に変えてみました。
「今日、学校でどんなことがあった?」
「面白そうなお便り、一緒に読んでみようか?」
もちろん、毎回同じようにうまくいくわけではありません。
それでも、わが家では以前より娘がプリントを持ってきてくれるようになりました。
そして、その中にある週予定表や提出物も、自然と確認できるようになったのです。
親が確認したいことも、きちんと確認する
ここで大切なのは、楽しく話すだけで終わらせないことです。
娘と学校の話を楽しむ一方で、必要な連絡事項は私たち親が確認するようにしました。
例えば、金曜日には翌週の予定表を一緒に確認します。
「来週の図工、何がいるかな?」
「空き箱が必要みたいだね」
「じゃあ、土曜日のうちに探しておこうか」
こんなふうに、買い物や週末の準備につなげます。
プリントを持ってくるきっかけは、楽しい学校の話。
でも、期限や持ち物の確認は親も責任を持って行う。
「学校のことを共有する時間」と「忘れ物を防ぐための確認」を、両方大切にするようになりました。
学校のプリント管理で、わが家が変えたこと
今回の経験から、私はプリントそのものの管理だけでなく、親の関わり方も大切なのだと感じました。
① プリントを出したら、まず学校の話を聞く
娘がお便りを持ってきたとき、最初に期限や内容を厳しくチェックするのではなく、学校での出来事を聞くようにしました。
「これ、どんなことをしたの?」
「楽しそうだね!」
娘が話したいことを聞いてから、必要な連絡事項を確認します。
ただし、これは家庭での一例です。
子どもが疲れているときなどは、無理に会話を求めず、落ち着いた時間に確認してもよいと思います。
② 金曜日に翌週の持ち物を確認する
日曜夜のような騒動を避けるため、金曜日のうちに週予定表を確認するようになりました。
特に図工など、家庭で材料を準備する必要があるものは要注意です。
金曜日に分かれば、週末に探したり買ったりする時間があります。
学校からの連絡アプリや配信がある場合は、そちらも確認したいところです。
③ 子どもに任せきりにしない
娘にも少しずつ、自分でプリントを出す習慣を身につけてほしいと思っています。
ただ、小学1年生になったからといって、すべての書類を自分で管理できるとは限りません。
特に、提出期限のある書類や授業の準備に関わるものは、大人が確認する必要があると感じています。
親が全部やってしまうのでもなく、子どもに丸投げするのでもない。
親子で一緒に確認しながら、できることを少しずつ増やしていく。
わが家では、そんな関わり方を大切にしたいと思うようになりました。
プリントを出さない子どもに、家庭で試すなら?
今回の経験を踏まえて、同じように困っている家庭で取り入れやすそうな方法も考えてみました。
ここからは、わが家で経験したことに加え、家庭で試すための提案です。
帰宅後の確認は、子どもに合ったタイミングで
帰ってきた直後は、疲れていたり、早く遊びたかったりすることもあります。
まずは少し休んでから、落ち着いた時間に確認するのもひとつの方法です。
プリントを出す場所を決めてみる
例えば、リビングに「学校のお便りを置く場所」をひとつ作る方法があります。
ランドセルから出したプリントを、そこに置くだけ。
最初から書類を細かく分類させるのではなく、取り出すことを習慣にしてみる。
親も確認しやすくなります。
※これは今回の実体験とは別の、今後試せる工夫です。
重要な連絡は学校の公式な方法でも確認する
プリントが見当たらず、翌日の持ち物や提出期限が分からないときには、学校の連絡アプリや連絡帳など、学校が指定する方法で確認しましょう。
大切な予定を子どもの記憶だけに頼らないことも必要です。
また、本人が何度もプリントをなくして困っている場合には、叱り続けるより、担任の先生と家庭での確認方法を相談することも選択肢になると思います。
まとめ|プリントは、娘の学校生活を知るきっかけだった
小学1年生になった娘が、学校のプリントをなかなか出してくれなかった頃。
私は提出期限や忘れ物ばかりを気にしていました。
日曜夜に図工の材料を買いに走ったときは、
「どうしてもっと早く教えてくれないんだ!」
と、娘に怒ってしまいました。
でも、その後に娘から言われた、
「プリント見せると怒るもん……」
という言葉で、考え方が変わりました。
そして、娘が自分から持ってきてくれた保健だより。
手洗いの仕方を教えてくれた、あの楽しそうな表情。
私にとっては、それが一番の発見でした。
プリントは、明日の持ち物を確認するためだけのものではありません。
親が知らない学校での娘の様子を、少しだけ教えてくれるものでもあります。
今でも、ときどきランドセルの奥からクシャクシャのプリントが出てきます(笑)。
完璧に管理できるようになったわけではありません。
それでも、以前のように日曜夜になって慌てることは減りました。
「プリント出した?」から「今日は学校で何があった?」へ。
これからも、必要なことは親として確認しながら、娘の学校での発見や出来事を一緒に楽しんでいきたいと思います。


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