「早く運んで遊びたかったんだもん」
食事が終わると、ピューっとゲームやおもちゃ、漫画のところへ向かう娘。
食器の片付けをお願いすると、
「分かった。食器運ぶよー」
と返事はしてくれます。
ただ、その様子は少し渋々。
早く遊びたい気持ちが勝ってしまうのか、食器を急いで運び、落としてしまうこともありました。
幸い、そのときは陶磁器のお皿が割れずに済みました。
でも、私はつい、
「何やってるの!」
と言ってしまいます。
理学療法士として普段から身体の動きを観察しているのに、家では娘の失敗を注意してしまう。
そこで、一度考え直しました。
食器を片付けることがゴールなら、その過程も楽しめないだろうか?
さらに、いつもの食器運びをちょっとした運動につなげられたら面白いかもしれません。
今回は、そんな思いから娘と横歩きやつま先歩きを試した、我が家の体験を紹介します。
食器を片付けないのではなく、早く遊びたかった
娘は、食器の片付けをまったくしないわけではありません。
お願いすれば運んでくれます。
ただ、食後にはゲームや漫画、おもちゃなど、やりたいことがたくさんあります。
今回、お皿を落としたときも、娘はこう話しました。
「早く運んで遊びたかったんだもん」
この言葉を聞いて、少し見方が変わりました。
片付け方が分からないわけではなく、片付けよりも遊びたい気持ちが強かったのかもしれません。
私が考えていたゴールは「安全に片付けること」。娘が考えていたゴールは「早く片付けて遊ぶこと」。
同じ食器運びでも、親子で重視していることが違っていたのだと思います。
理学療法士パパとして気になった食器運びの動き
ここで注目したのが、食器を持って歩くときの身体の動きです。
普段、何も持たずに歩くときと、手にお皿を持って歩くときでは、気を付けることが増えます。
例えば、
- 食器を落とさないように手の位置を保つ
- テーブルや台所などの障害物を避ける
- 歩く速さを調整する
- 身体が揺れたときに姿勢を立て直す
といったことです。
理学療法士の視点で考えると、食器運びは単純に足を動かすだけの作業ではありません。
手で物を支えながら、周囲を確認し、歩く速さや姿勢を調整する必要があります。
特に急いでいると、身体の動きに注意を向けにくくなる可能性もあります。
ただし、今回お皿を落とした直接の原因が、姿勢やバランスだったとは言い切れません。
急いでいたことに加えて、手の持ち方や周囲への注意など、いくつかの要因が重なった可能性があります。
そこで、まず考えたのが「ゆっくり歩く」というシンプルな工夫でした。
関連記事:子どもの自転車で荷物はどう運ぶ?肩掛けバッグでふらついた娘と試したこと
まずはゆっくり歩くことから始めた
食器を持っているときに身体がテーブルや台所に当たると、身体が揺れて食器を落としてしまうかもしれません。
そのため、まずは急がずにゆっくり運ぶことを意識しました。
速く運び終えるのではなく、落とさずに運び終えることを大切にする。
これは食器運びに限らず、物を持って移動するときに役立つ考え方だと思います。
ただ、ゆっくり運ぶだけでは、いつもの片付けと大きく変わりません。
そこで私が思いついたのが、歩き方を変えてみることでした。
横歩きに挑戦!いつもと違う動きに娘も興味を持った
最初に試したのは、横歩きです。
正面を向いて歩くのではなく、身体を横に向けて一歩ずつ移動します。
娘は最初、少し手こずっていました。
でも、こんな反応がありました。
「横向いて歩くの難しいけど、いつもと違うことだから楽しい」
普段の食器運びには、あまり乗り気ではなかった娘。
それが、歩き方を少し変えるだけで、面白さを感じてくれたようでした。
横歩きでは身体のどこを使う?
横歩きでは、普段の前向きの歩行とは違う方向に体重を移動させます。
片方の足で身体を支えながら、もう片方の足を横へ動かすため、お尻の横にある筋肉なども働きます。
また、足の運び方が変わることで、身体のバランスを調整する必要があります。
今回の目的は、筋肉を鍛え込むことではなく、普段と異なる身体の動きを体験してもらうことでした。
慣れてきたので、次はつま先歩きに挑戦
横歩きの次に試したのが、つま先歩きです。
かかとを床から少し浮かせて歩いてみます。
ところが、娘にとっては思ったより難しかったようです。
「ふらふらして難しいよー。でもなんか面白い」
この反応が印象に残っています。
難しさを感じながらも、いつもと違う動きを楽しんでいたのです。
つま先歩きはなぜ難しい?
つま先歩きでは、普段の歩行よりもかかとが高い位置になります。
足の裏で床に接する範囲が変わり、足首やふくらはぎを使った姿勢の調整が必要になります。
また、食器を持っていれば手を自由に使いにくくなるため、バランスを保つことがさらに難しくなる場合もあります。
今回の娘がふらついたのも、慣れない歩き方や身体の重心移動が関係していた可能性があります。
ただ、ふらつきの原因を一つに決めつけることはできません。
そして、今振り返ると、もう一つ大切な点があります。
面白い動きであっても、食器を持ったままふらつくことには落下や転倒のリスクがあります。
我が家では食器運びの中で横歩き・つま先歩きを試しましたが、安全面から考えると、遊びと片付けを分ける工夫が必要だったと思います。

食器片付けへの反応が少しずつ変わった
最初は、横歩きやつま先歩きに手こずっていた娘。
しかし、いつもと違う歩き方が刺激になったようです。
それまで渋々取り組んでいた食器運びを、積極的に行うようになりました。
また、もともとの目的だった「ゆっくり運ぶこと」にもつながりました。
私にとって今回の大きな発見は、片付けるという目的は変えずに、取り組み方を変えることで、娘の反応が変わったことです。
ただし、今回の変化がずっと続くかどうかは、まだ分かりません。
毎回同じ遊び方が通用するとも限らないでしょう。
家庭で試すなら、安全な食器運びと運動遊びを分けよう
今回の経験から、家庭で取り入れるなら次のような形が良いと考えています。
① 実際の食器は普段の歩き方でゆっくり運ぶ
まずは食器を落とさずに運ぶことを優先します。
急がず、周囲を確認し、無理のない量を運びましょう。
我が家でも、ガラスのコップなどの割れ物は両手で持ち、普段の歩き方でゆっくり運んでいます。
料理を運ぶときも、普通にゆっくり歩いています。
② 横歩きは食器を置いてから遊ぶ
横歩きは、食器を持たない状態で試す方が安全です。
障害物のない広い場所で、少しずつ横に移動してみる。
歩く方向が変わるだけでも、普段とは違う身体の使い方になります。
③ つま先歩きも手ぶらで挑戦する
つま先歩きも、何も持たず、転倒したりぶつかったりしにくい場所で行うのが良いでしょう。
ふらつく場合は無理に続けず、普段の歩き方に戻します。
大切なのは、難しい歩き方を成功させることではなく、安全に身体を動かす経験を楽しむことです。
理学療法士として考える「お手伝いと運動」の関係
私は今回、食器運びを運動につなげられないかと考えました。
ただ、食器運びだけで体力が大きく向上するわけではありません。
むしろ注目したいのは、日常生活の中にも姿勢や動きを調整する機会があるということです。
食器を運ぶときには、物を持つ、歩く、周りを見る、動きを調整するといったことを同時に行います。
研究でも、子どもが歩行などの動作と別の課題を同時に行うと、課題の難しさによって動き方が変わることが示されています。
ただし、今回の食器運びによって娘の運動能力が向上したと証明されたわけではありません。
私が今回、何より良かったと感じたのは、日常のお手伝いを娘が前向きに行うようになったことです。
運動への興味は、その延長線上にあるものだと思います。
まとめ|「早く片付けて!」から「どうしたら楽しくなる?」へ
今回、食後の食器運びを通して私が考えたのは、子どもの行動を注意するだけで終わらせないことでした。
娘がお皿を落としたとき、最初に出た言葉は「何やってるの!」。
でも、娘には早く遊びたい理由がありました。
そこで、ゆっくり運ぶことに加え、横歩きやつま先歩きを取り入れてみました。
結果として、娘はいつもと違う動きを楽しみ、食器片付けにも以前より積極的になりました。
一方で、ふらつく動作と食器運びを一緒に行うことには、安全上の課題もあります。
今後、同じような工夫をするなら、食器運びは安全第一、バランス遊びは食器を置いてから。
家事を無理やり運動に変えるのではなく、毎日の生活の中に、子どもが面白いと思えるきっかけを見つけていく。
そんな積み重ねが、食器片付けの習慣にも、身体を動かす楽しさにもつながっていけば良いなと思います。


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