「パパ―、サッカーしよう」
娘から突然、こんな言葉が出てきました。
これまで、あまりボールを蹴って遊ぶことがなかった娘。
そんな娘が、自分からサッカーをしたいと言ってきたのです。
せっかくなら、少しでも上手にボールを蹴れるようになってほしい。
理学療法士として、軸足の位置や重心移動を考えながら蹴り方を伝えようとしました。
ところが、娘から返ってきたのは、
「これが一番強く蹴れるの」
という言葉と共につま先で思いっきりボールを蹴ることでした。
どうやら娘が楽しみたかったのは、正確なパスの練習よりも、まずは思いっきりボールを蹴ることだったようです。
今回は、娘とのサッカーを通して、私が「技術を教える前に大切にしたいこと」に気づいた体験を紹介します。
娘がサッカーをしたいと言ってきた!
普段は、そこまでサッカーボールを蹴って遊ぶことが多くない娘。
その娘が自分から「サッカーしよう」と誘ってきました。
私は最初、パス交換をしながらボールのコントロールを練習できればよいと考えました。
ボールを相手に届けるためには、どこを蹴るかだけでなく、身体のバランスも関係します。
理学療法士の視点では、軸足や重心移動、蹴るときの姿勢などが気になります。
そこで、インサイドキックやインステップキックといった蹴り方も考えながら、娘に伝えようとしました。
しかし、ここで私の考えと娘の気持ちに、少し違いがあったのです。
「これが一番強く蹴れるの」娘が求めていたのは正確さではなかった
インサイドキックを勧めたとき、娘が言いました。
「これが一番強く蹴れるの」
私はパスのコントロールをよくしたい。
でも娘は、力いっぱいボールを蹴りたい。
同じサッカーでも、親子で目指していることが違っていたのです。
ちなみに、サッカーには次のような蹴り方があります。
- インサイドキック: 足の内側を使う蹴り方。方向を合わせたパスなどに使われます。
- インステップキック: 足の甲を使う蹴り方。強いシュートなどに使われます。
どちらにも特徴がありますが、今回の娘にとって大切だったのは、蹴り方の名前を覚えることではありませんでした。
まずは、自分が気持ちよくボールを蹴ること。
私は、その気持ちを十分に考えられていなかったのかもしれません。

蹴り方を教えるより、まずは思いっきり蹴ってみよう!
そこで、私は声かけを変えました。
「今日は思いっきり蹴ってみよう」
最初に考えていた、パスのコントロールを高めるための練習を優先するのではなく、娘がやりたいことを中心にサッカーをすることにしました。
すると、20分程パス交換をした後、娘から新しい提案が出てきました。
「ドリブルするからパパが止めてー」
今度は娘がボールをドリブルしながら私の方へ向かってきました。
正確なパスを出す練習ではなく、自分でボールを運ぶ遊びです。
私は娘の希望に合わせて、ドリブルを止める役になりました。
今回のサッカーでは、娘が終始楽しそうにしていたことが印象に残っています。
理学療法士として考えた、ボールを蹴る難しさ
サッカーでボールを蹴る動きは、単純なようで、身体のさまざまな働きが必要になります。
例えば、片足を振り出してボールを蹴る場面を考えてみます。
① 軸足で身体を支える
蹴る足とは反対の足で身体を支えます。
その位置が変わると、ボールとの距離や蹴る方向も変わります。
② 重心を移動させる
蹴る動作では、身体の重さをどのように移すかも関係します。
ただし、重心を前に動かせば必ず強く蹴れるというわけではありません。
③ ボールに足を当てるタイミングを合わせる
動いている足を、狙った位置でボールに当てる必要があります。
ここには、目で位置を確認することや、身体を動かすタイミングを調整することも関係します。
さらに、ドリブルではボールも自分も移動するため、より多くの調整が必要になります。
こうした動作は、子どもが繰り返し経験する中で、少しずつ学んでいくものです。
ただし、今回の娘がうまく蹴れなかった原因を、軸足や重心移動だけで説明することはできません。
娘がどのような動きをしたかったのか、何を楽しんでいたのか。
身体の使い方だけでなく、そのときの目的にも目を向ける必要があると感じました。
リハビリでも大切にしている「本人がやりたいこと」
私は普段、病院で理学療法士として働いています。
リハビリでも、こちらが考える練習と、患者さん本人がやりたいことが必ずしも一致するとは限りません。
そのため、本人の希望や目標を確認しながら、必要な訓練を組み立てることがあります。
今回のサッカーも、それに近いものを感じました。
私は、パスのコントロールをよくするための練習を考えていました。
でも、娘がしたかったのは思いっきり蹴ったり、ドリブルしたりすること。
もちろん、技術を教えることが悪いわけではありません。
ただ、今の娘が求めていない練習を一方的に続けても、楽しさにつながらなかったかもしれません。
日本サッカー協会(JFA)も、育成年代のサッカーでは子どもを主役として考える「PLAYERS FIRST!」を大切にしています。
運動やスポーツへの意欲に関する研究でも、本人の意思や選択を尊重する関わり方は、自分から取り組もうとする意欲と関連すると報告されています。
ただし、今回のような一度の親子遊びによって、長期的な運動意欲が高まるとまでは言えません。
今回の経験から私が大切にしたいのは、子どもの「やりたい」を、親が考えた練習で上書きしないことです。
ドリブル中に転倒!娘の「痛いー。でも大丈夫」
楽しくサッカーをしていた中で、転倒する場面もありました。
娘がボールを蹴り損ね、足がボールの上に乗ってしまったのです。
そのままバランスを崩して転び、膝を擦りむいてしまいました。
「痛いー。でも大丈夫」
そう言った娘は、泣きませんでした。
泣かずに自分の気持ちを言葉にする姿を見て、私は娘の成長を感じました。
今回の転倒は、サッカーでボールを扱う難しさを改めて考えるきっかけにもなりました。
家庭で親子サッカーを楽しむなら、まず何から?
今回の経験をもとに、家庭でサッカーを始めるときに私が意識したいことをまとめます。
1. まずは子どもがやりたい遊びから
強く蹴りたいなら、周囲の安全を確認したうえで蹴ってみる。
パス交換をしたいなら、一緒にパスをする。
ドリブルしたいなら、ドリブルをする。
大人が最初から練習メニューを決めるよりも、子どもの希望を聞くことから始めてもよいと思います。
2. 技術的な声かけは必要なときに
ボールのコントロールが難しい場合、一般的には次のような点を確認できます。
- 軸足がボールから離れすぎていないか
- 身体のバランスが崩れていないか
- 足を当てる位置が安定しているか
ただし、一度に多くのことを伝える必要はありません。
まずは子どもの動きを見て、必要なときに一つずつ工夫する方法が考えられます。
3. ドリブルやパスの難易度を調整する
ボールの扱いに慣れていない場合は、近い距離から始めたり、ゆっくり動いたりする方法があります。
保護者が相手になるなら、強くボールを奪いにいくよりも、子どもが動きを試せる余裕をつくることも一案です。
子どもが何を楽しみたいのかを確認しながら調整していきたいですね。
ボール遊びで気をつけたい安全面
親子でサッカーをするときは、楽しさと同じくらい安全も大切です。
特に、ボールの上に足を乗せてしまうと、滑ったりバランスを崩したりすることがあります。
家庭で遊ぶ場合は、次のような点に気をつけたいところです。
- 車や自転車が通らず、周囲に人が少ない安全な場所を選ぶ
- 穴や段差、滑りやすい場所がないか確認する
- 足に合った運動靴を履く
- 疲れや痛みが出たら無理に続けない
また、膝を擦りむいた場合は、まず傷の状態を確認します。
一般的な軽い擦り傷では、きれいな流水で汚れを落とし、必要に応じて清潔な被覆材で保護します。
傷に砂や異物が残っている、出血が止まらない、痛みが強い、腫れが大きい、歩けないといった場合は、医療機関での確認が必要です。
「泣かなかったから大丈夫」と判断せず、身体の状態を確認することが大切です。
まとめ|サッカーの上達より、まずは娘の「やりたい」を大切にしたい
今回は、これまであまりボールを蹴って遊ばなかった娘が、自分からサッカーに誘ってくれました。
私は最初、理学療法士として軸足や重心移動を考えながら、蹴り方を教えようとしました。
でも娘がしたかったのは、思いっきりボールを蹴ること。
さらに、自分からドリブルを提案して、楽しそうに遊んでいました。
途中で転倒して膝を擦りむくこともありましたが、「痛いー。でも大丈夫」と言葉にした娘の姿にも成長を感じました。
今回、私が感じたのは、子どもが自分からやりたいと思った気持ちを大切にすることです。
技術的なことは、また娘がやりたいと思ったときに、一緒に考えていけばよい。
理学療法士として身体の動きを観察することも大切ですが、父親として、まずは娘とサッカーを楽しむこと。
そんなことを考えた親子の時間でした。
また娘がサッカーしたいと言うことを楽しみにします。


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