娘が補助輪なしの自転車に乗れるようになり、公園ではかなり安定して走れるようになりました。
まっすぐ走る。
曲がる。
ブレーキをかけて止まる。
「これなら、そろそろ公道も走れるかな」
私もそう思っていました。
ところが実際に道路を走ってみると、公園で練習していた時にはなかった「難しい」が次々に出てきました。
狭い道では、
「道が狭いし、向こうから人が来てるから怖いー」
信号で止まろうとした時には、段差もあって少し道路側にはみ出してしまい、
「2本線練習の時にはこういうのなかったから難しい」
そして下り坂では、
「わー。スピードが出るー」
確かに娘の言う通りでした。
自転車に「乗れるようになる練習」はしてきました。
でも、実際の道路にある人、信号、段差、坂道まで含めた練習は十分にはしていませんでした。
今回は、理学療法士として子どもの動きを見ながら考えつつも、父親として一緒に失敗した「初めての自転車公道デビュー」について紹介します。
公園では乗れた。でも公道では全然違った
自転車に乗るためには、ペダルをこぐ、バランスを取る、ハンドルを操作する、ブレーキをかけるといった複数の動作が必要です。
しかし公道では、それだけではありません。
前から人が来ていないか。
信号は何色か。
どこで止まればいいか。
路面に段差はないか。
坂道で速度が上がっていないか。
周囲の状況を見ながら、その都度、自転車の操作を変える必要があります。
7〜12歳の子どもを対象とした研究でも、自転車技能には年齢による差がみられ、ペダリング・ブレーキ・操舵などを含む自転車操作は成長や経験と関連すると報告されています。
また、子どもと成人を比較した研究では、子どもの方が潜在的な危険を発見して反応するまで時間がかかる傾向も報告されています。もちろん、これは一人ひとりの子どもの能力を決めるものではありません。「うちの子は注意力が弱い」と判断できるものでもありません。
私が今回感じたのは、
「自転車に乗れる」と「いろいろな状況がある道路で自転車を操作する」は、少し違う課題なのだ
ということでした。
①「道が狭いし、人が来るから怖い」
最初は、大きな道路に出る前の細い道を走りました。
すると娘が、
「道が狭いし、向こうから人が来てるから怖いー」
と言いました。
公園では周囲にかなり余裕があります。
少し左右にふらついても、すぐに何かにぶつかるわけではありません。
しかし狭い道では、「この幅の中を走らないといけない」という状況になります。
さらに前から人が来れば、
自分の進む場所を見る。
相手の動きも見る。
自転車の方向を調整する。
必要なら速度を落とす。
と、一度にやることが増えます。
ここで「怖がらなくていいよ」と言って、そのまま走らせることだけが正解ではないと思いました。
怖いと感じたのであれば、
「じゃあ、こういう時は一回止まろうか」
という選択肢もあります。
公道では「ずっと乗り続ける」ことが目的ではありません。
安全に通れないと思えば、止まったり、自転車から降りたりするのも立派な判断だと思います。
警察庁では、13歳未満の子どもは一定の場合に歩道を自転車で通行できますが、その場合でも歩行者優先で、歩行者の妨げになる場合には一時停止することが示されています。
「人がいたらどうする?」
そんな状況まで含めて練習しておく必要がありそうです。
② 信号で止まろうとしたら、少し道路にはみ出した
次に難しかったのが信号でした。
信号で止まろうとした時、路面に段差がありました。
娘はブレーキをかけましたが、少し勢いが残っていて、停止したい場所より前に出てしまいました。
娘が言いました。
「2本線練習の時にはこういうのなかったから難しい」
その言葉を聞いて、
「確かにそうだな」
と思いました。
今まで練習してきた時は、比較的平らで、分かりやすい条件でした。
「ここで止まろう」
という練習はしていても、その手前に段差があったり、信号を確認しながら止まったりする状況までは作っていませんでした。
つまり、「ブレーキができない」というより、条件が一つ増えたことで、ブレーキを始めるタイミングが変わったとも考えられます。
過去の研究でも、8〜12歳の子どもを模擬交通環境で調べたところ、信号で止まらなかったり、停止距離が短い場面で止まるのが遅れたりするケースが報告されています。もちろん古い海外研究であり、今回の娘の行動をその研究だけで説明することはできませんが、「止まれる場所で止まれる」と「複雑な状況の中で早めに止まる」は同じではないことを考える材料になります。
そこで娘とは、
「信号や段差がある時には、いつもより早めにブレーキをかけよう」
と約束しました。
ここで私自身も一つ反省しました。
「線のところで止まる練習」だけではなく、
線に着く前に、いつ減速を始めるか
まで練習しておいた方がよかったのです。

③ 下り坂で「わー。スピードが出るー」
もう一つ難しかったのが坂道でした。
下り坂に入ると、自転車の速度が少しずつ上がっていきます。
娘は、
「わー。スピードが出るー」
と言いました。
この時は私が止めました。
そして、
「スピードが出てから止めるんじゃなくて、スピードが出る前からブレーキを使いながら下ろう」
と話しました。
ここでも、公園での練習との違いが出ました。
平地であれば、自分がペダルをこがなければ大きく速度は上がりません。
しかし下り坂では、こいでいなくても速度が上がっていきます。
そのため、
「速くなった→ブレーキ」
ではなく、
「この先は下り坂→先に速度を落としておく」
という一つ先の判断が必要になります。
JAFも子どもの自転車利用について、速度が高くなってからではブレーキが間に合わない場合があるとして、コントロールできる速度で走ることや、ブレーキで止まる練習の重要性を説明しています。
急な坂道や、子ども自身が速度をコントロールできない場所なら、無理に自転車で下る必要はありません。
降りて押すという選択も含めて覚えていけばよいと思います。

「乗れる」と「公道を走れる」は少し違った
今回、公道を走ってみて一番感じたのはこれでした。
娘は自転車に乗れます。
でも公道では、
「自転車を操作する能力」
に加えて、
「周囲の状況に合わせて自転車の操作を変えること」
が必要になります。
人が来た。
信号がある。
段差がある。
坂になった。
こうした状況は毎回少しずつ違います。
交通場面の動画を使った研究では、9歳前後の子どもに危険予測を練習させることで、一部の危険への反応が改善した研究もあります。
ただし、自転車安全教育についての研究では、知識が増えても実際の事故減少まで明確に証明されているわけではありません。
だからこそ、
「これを練習すれば絶対安全」
というものではないと思っています。
実際の道路環境、子どもの様子、その日の状態を見ながら、親が一緒に判断していくことが大切です。
公道デビュー前に追加したい3つの練習
今回の失敗から、もしもう一度公道デビュー前に戻れるなら、私はいつもの自転車練習に少しだけ条件を加えます。
1.狭い幅で走って、必要なら止まる
広い場所に線や目印を作り、その範囲から大きく出ないようにゆっくり走ります。
そして親が安全な位置から、
「前に人がいたらどうする?」
と聞いてみます。
避け続けるだけではなく、
「止まる」
という選択肢も覚えてもらいます。
2.停止線より手前からブレーキを始める
「ここでブレーキ」ではなく、
「この先で止まりたいから、ここからゆっくりにする」
という練習です。
実際の道路の段差へ向かって練習する必要はありません。
安全な場所に停止位置を作り、少し早めに速度を落とす経験を増やすだけでもよいと思います。
3.坂道は「入る前」に速度を調整する
最初から急な坂で練習する必要はありません。
安全が確保された緩やかな傾斜で、
「坂だから、先にゆっくりにしよう」
と確認します。
速度をコントロールできない坂なら、乗らないという判断も含めて練習です。
私が娘から教えてもらったこと
今回一番印象に残ったのは、
「2本線練習の時にはこういうのなかったから難しい」
という娘の言葉でした。
私は、
「練習したからできるだろう」
と思っていました。
でも娘からすると、
「練習した場所と今は違う」
だったのです。
それを聞いて、
できなかった時にすぐ、
「もっとブレーキ練習しよう」
と考えるだけでは足りないのだと気づきました。
どこで難しくなったのか。
何が加わったのか。
本人は何を怖いと思ったのか。
そこを見てみると、次に練習することが見えてきます。
理学療法士として動きを見ることはありますが、子どもとの生活では、最初から正解が分かるわけではありません。
実際にやってみて、
失敗して、
娘の言葉を聞いて、
「じゃあ次はこうしてみよう」
と変えていく。
自転車の練習も、そんな繰り返しなのだと思います。
まとめ|公道デビューは「乗れた!」の次の練習
公園で自転車に乗れるようになったら、それで練習終了ではありませんでした。
公道では、
狭い道。
歩行者。
信号。
段差。
坂道。
など、練習場所にはなかった条件が加わります。
今回わが家では、
「人がいたら無理に進まない」
「信号や段差の前では早めにブレーキ」
「下り坂では速度が出る前から調整する」
という約束を追加しました。
ただし、これはわが家でうまくいきそうだった方法の一例です。
子どもの年齢、自転車操作の習熟度、道路環境によって必要な練習は変わります。
自転車に乗れなかった時だけではなく、
「乗れるようになった後」
にも、子どもの動きを少し観察してみる。
すると、
「次はここを練習してみようかな」
というヒントが見つかるかもしれません。


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